新庄監督はなぜ藤浪晋太郎を“登板”させた? お手上げ杉谷が象徴するチームの課題
杉谷が意図を代弁「速いストレートをうちは打てていない」
沖縄県名護市で行われている日本ハムの1軍キャンプに2日、阪神の藤浪晋太郎投手が“登場”した。といっても近隣の宜野座村で行われている阪神キャンプから訪ねて来たわけではなく、日本ハムが練習で用いたバーチャル投球マシンの対戦相手としてだ。なぜ、対戦機会の少ない藤浪をここに起用したのか。新庄剛志監督の狙いからは、日本ハムが抱える課題が透けて見える。
このマシンは、大型画面に投手のモーションが映し出され、手にあたる部分からボールが飛び出してくるという仕組みだ。藤浪とソフトバンク・モイネロの映像に加え、阪神での現役時代に投手転向に挑んだことのある新庄監督自身の映像もあるという。その中でこの日、藤浪を練習相手に選んだ理由は何なのか。新庄監督は端的に説明してみせた。
「いろんなところにボールが行くピッチャーじゃないですか。藤浪君を打てたら、もう誰も怖くないというくらいの……」
実際、この藤浪はボールのスピードもキレも抜群だった。最初に打席に入った杉谷は、打ち始めこそ大きな声でアピールしていたものの、初球を空振り。その後もなかなか前に打球を飛ばせず、声もトーンダウンしていった。「ものすごい速かったですけど、これから対応していければと思います」と頭をかきながらも、練習の意図はしっかり理解していた。
「昨季も速いストレートを投げる投手を、うちのチームは打てていない。だからこういう練習になったんだと思う」
昨季、日本ハムのチーム打率.231、総得点454はともにリーグ最下位。特に得点は、5位の西武(521点)にさえ67点も引き離された。直球の平均速度がどんどん上がる日本球界で、その速球に対応できていなければ置いていかれるのも当然だろう。
ちなみにこのマシンは、杉谷が昨オフまで常連として出演していたテレビ番組の企画「リアル野球BAN」で使われているものと同様。このオフは新庄監督からバラエティ番組への出演を禁じられたためできなかった。久々の“対戦”にも「キャンプはキャンプなんで、そういう感情はないです。あとは実戦にむけて仕上げていきたい」。6日の紅白戦から実戦形式の練習が始まる。最新鋭マシンで感覚を磨いた選手は、スピードボールにどう対応してくるか。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)