鷹・千賀滉大が新たに球種を増やすワケ 「幅を広げる」だけではない思いとは?
「単純に真っ直ぐ、フォークだけでは見ている人も飽きている」
着実に歩みを進めるキャンプに充実感が漂っている。宮崎で春季キャンプを行っているソフトバンク。B組で汗を流している千賀滉大投手が例年になく、順調に調整を進めている。
第2クール初日となった5日はこのキャンプで3度目のブルペン入り。相棒の甲斐拓也捕手と今年初めてコンビを組んで、ストレートだけでなく変化球も交えて70球を投じた。その中には、今季から本格的に導入を目指しているシンカーも含まれ、何度も感触や軌道を確認していた。
昨年からダルビッシュ有投手が生み出したシンカー系の球種「スプリーム」を取り入れたものの、実戦での投球はそれほど多くなかった。代名詞であるお化けフォークをはじめ、カットボールやスラーブなども操る千賀。現状でも球界トップクラスの力の持ち主でありながらも、より一層の“進化”を求める向上心は尽きることはない。
そして、その根源にある考えがまた面白い。「とにかく自分の幅を広げるためにもいろんな球種がある方がいい」と語ると、さらに続けて「単純に真っ直ぐ、フォークだけでは見ている人も飽きていると思うので。やっている方も見ている方も、見ていて面白くないと思う。どんどん進化していかないと。僕もそんな考えなので」と言うのだ。見ているファンを飽きさせない。そんなモチベーションも千賀は持ち合わせている。
そんなエースに対する藤本博史監督の信頼は厚い。このキャンプで初めてブルペンで投手陣の投球を見守った指揮官は「千賀はモノが違うな、と。特に色々考えながらやっているんで、ちょっと立ったような投げ方とか、ギアの入れ方を変えてやっているんで、すごくいいんじゃないかと思いますね」という。指揮官は「開幕に間に合わせてやってくれたらいいんで。開幕投手じゃないですよ、開幕投手はまだ決まってませんので」と笑わせたが、開幕投手の筆頭候補であることは間違いない。
一昨年、そして昨年はリハビリ組でキャンプを過ごしたが、今年は順調そのもの。本人も、そしてボールを受けた甲斐も「去年のシーズンよりも、いい状態で投げられている」というほど状態は良さそう。敵は故障のみ。それさえなければ、今年の千賀はとんでもない成績を残してくれそうだ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)