戦力外となった広島時代とどう違う? A組昇格の鷹育成右腕が高知で遂げた“変貌”
「もう一度野球の楽しさ、投げる喜びを知れたのが大きかった
広島時代から一体、どんな変化があったのか。藤井はこの日の登板後にこう語った。「広島の時は、結果にこだわりすぎて、自分の投球ができなかった。今は結果も大事になってくるんですけど、そこにとらわれ過ぎず、純粋に野球を楽しもうと思ってやっています。1軍に行くと、結果が悪ければ落とされてしまうので、そこを気にしすぎていた部分があった」。1軍争いにおいて、結果を追い求めるがあまり、自分と自分の投球を見失ったのだという。
それに気付き、意識を変えてくれたのが、高知だった。「四国に行って、結果より野球を楽しもうという思いでやってきました。もう一度野球の楽しさ、投げる喜びを知れたのが大きかった。技術的なこともあったと思うんですが、それよりもそういう気持ちの面が僕にとって大きかった」。印象的だった野球の楽しさ、投げる喜び、というフレーズ。自身が何のために野球をやっているのか。その原点に気付くことができた。
独立リーグは当然、環境面ではNPBに遥かに及ばない。練習場所も、トレーニング環境もどう考えたって劣る。その中で藤井は“考える力”も得た。「練習するにしても練習相手を探したり、器具をどう工夫していくか。工夫することで頭を使う。それがいい方に働いていったと思うので、厳しい環境でしたけどプラスになりました」。高知での経験を経て、一回りも、二回りも成長して、再びNPBの舞台に戻ってきた。
藤本監督は「なんで広島クビになったんかな、と。真っ直ぐもズドンとくるし、スライダーもキレがいい。選手にもどんな感じか聞いたら、びっくりするような感じを言っていた。面白いかな、と」と大絶賛。キャンプインからA組にいる重田倫明投手、同じくA組昇格が決まった中村亮と共に「3人は支配下に近い」とまで評価していた。初の紅白戦で強烈なインパクトを残し、A組昇格を決めた藤井。一度は戦力外の憂き目に遭いながらも、NPB返り咲きを果たした25歳はこの先支配下昇格を勝ち取れるのか。ここからのアピールに注目だ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)