創部9か月で強豪を追い詰めた 千葉・市川南ポニーを強くする「主役はみんな」の精神
「おとなしい子ばかり」という印象だった子たちが流した涙
強いチームに勝つためにはベンチ(采配)がどうやって1点を取るのかも重要なポイントだ。投手、野手も自分たちの役割を徹底し、山本監督の考えを選手たちが体現していた。それでも、強豪をあと一歩のところまで追い詰めたが、白星には手が届かなかった。山本監督は試合後、驚きの光景を見た。選手たちは三塁ベンチ裏の控室で、涙を流していた。
山本監督は9か月前のことを回想していた。
「このチームに入ってきた頃は、みんなおとなしい子ばかりでした。こっちが言わないと動けない。なので、最初は『自分のことは自分でやる』『片付けや準備は率先して行う』ということから徹底させました。あとは、主役はみんなだから、エラーしたって、失敗したっていい。常にチャレンジしながら、楽しみながら、勝って行こうということを伝えていましたね」
この日、選手たちは敗れはしたが、自分たちのやれることを考え、打撃に守備、そして継投など、それぞれを実践していた。9か月前、スタートを切った指揮官の言葉は、試合展開にも表れていたのではないだろうか。何が足りなかったのか――。その涙の理由は、これから分かっていけばいい。
「子どもたちが泣いている姿、初めて見ましたよ」
ポニーの今大会は、負けたら終わりのトーナメントではなく、リーグ戦で頂点を目指す試合方式。子どもたちに試合経験をたくさんして、うまくなってほしいと願っているからこそのルールだ。市川南は初戦で敗れたからといって、その先の道を絶たれたわけではない。山本監督は強豪を追い詰めた1試合に子どもの成長を確かに感じ、次のチャンスへ向けて、準備を進めていく。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)