中学受験と野球は「両立できる」 東大元監督の学習塾長「絞り込まないほうがいい」

東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:高木希】
東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:高木希】

“文武両道”が習慣付いている子どもは「オン、オフの切り替えが上手」

 中学受験と野球の両立は、多くの学童球児たちが直面する悩みだろう。東大野球部元監督で、学習塾「Ai西武学院」の塾長を務める文武両道のエキスパート、浜田一志氏に「野球を辞めなくても受験に勝つ方法」を聞いた。

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 中学受験のために小学5、6年生になると野球を辞めてしまう子は多いですね。高校、大学受験なら野球は夏までなので、残りの半年間ラストスパートすれば良いですが、学童野球は6年生の12月までありますから、受験に集中する時間が取れないと心配になる気持ちはよくわかります。

 ただ東大野球部員でいうと、中学受験の時期に野球を辞めていた子は3割くらいで、7割の子は続けている。はたから見ていると大変だなと思うかもしれませんが、勉強もして、野球もしてという「文武両道」が習慣付いている子っていうのはオン、オフの切り替えが上手なので、問題なく両立できるんです。だから練習を休みがちになるかもしれないけど、無理のない範囲で野球を続けることをお勧めします。

 野球を辞めなくては受からない中学だとしたら、志望校を再検討した方が良いかもしれません。これは私の個人的な意見ですけれど、好きな野球をやりながら、受かる中学に行った方が幸せだと思います。東大野球部にもそういう子が非常に多いです。

 無理してレベルの高い中学に進んでも、勉強についていくだけで精一杯になって、部活もやる余裕がないような辛い中高6年間を送ることになる可能性があります。開成中学に入ってビリになるより、ランクを少し下げて上位グループにいた方が、結局は大学入試で結果が良かったなんてこともあります。野球でも東大のレギュラーの方が、他大学の補欠より上手いのと一緒。「レギュラー」として活躍できる学校を選ぶ方が子どものためになるんです。

 子どもの才能や向き、不向きなんていうのは、小学6年生ではまだ分かりません。アイデンティティを醸成するという意味でも、可能性は絞り込まない方がいい。だからこそ勉強も野球もやって、無理なくついていける環境を選ぶ方がいいと思います。

○浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高校で野球部に所属し、東大理科二類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。東大工学系大学院を修了後、会社員を経て1994年に文武両道を目指す学習塾Ai西武学院を開業。2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。2015年の東京六大学春季リーグで東大の連敗を94で止め、2017年秋には30季ぶり勝ち点を挙げた。

(石川哲也 / Tetsuya Ishikawa)

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