イチローが口にした「アメリカンジョーク」 わずかな“間”に見えた孤独の意味【マイ・メジャー・ノート】第3回

2019年3月21日、東京ドームで行われたアスレチックスとの開幕第2戦、8回裏に守備に就いた直後に交代したイチロー【写真:Getty Images】
2019年3月21日、東京ドームで行われたアスレチックスとの開幕第2戦、8回裏に守備に就いた直後に交代したイチロー【写真:Getty Images】

引退会見での告白「孤独を感じて苦しんだことは多々ありましたけど…」

――孤独を感じながらプレーしていると話していたが、ヤンキース、マーリンズに移籍し、そしてマリナーズに戻ってからも、その孤独をすっと感じながらプレーをしていたのでしょうか。

「今日の段階で、それは全くないです。それとは少し違うかもしれないですけど、アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったことで、人の心を慮(おもんぱか)ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね。この体験というのは、本を読んだり、情報を取ることはできたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので」

「孤独を感じて苦しんだことは多々ありましたけど、その体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと、今は思います。だから、辛いこと、しんどいことから逃げたいと思うのは当然のことなんですけど、でもエネルギーのある元気なときにそれに立ち向かっていく、そのことはすごく人として重要なことなのではないかなと感じています」

 強靭な目的意識が貫かれた言葉である。思い出すのは、米移籍後3年目だった。イチローは仲間たちからの視線を「日本から来た首位打者がなんぼのもんじゃいって!」と吐露した。前人未踏の年間262安打、10年連続200安打、そして通算3000本超えを成し遂げた稀代の打者は、35歳を超えたキャンプで、こう言った。「みんな敵に思える」。ベテランになっても慢心の芽など出るはずもなかった。

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