高卒1年目オフに育成へ…支配下復帰の鷹・田上奏大が過ごした“逆転の5か月”

ソフトバンクと支配下契約を締結した田上奏大【写真:球団提供】
ソフトバンクと支配下契約を締結した田上奏大【写真:球団提供】

気持ちの強さと前向きさが支配下復帰へのエネルギーになった

 まず、取り組んだのは“投げる体力”を付けること。ブルペンに入る頻度や量を計画的に増やしてきた。昨年までであれば、イニングや球数が増えてくると目に見えてバテて球速も落ちたが、今年は「球数が増えても全然動けます」と手応えを感じている。

 もう1つは肉体改造。ウエートトレーニングのセット数も負荷も増やして、自らを追い込んできた。体重を維持しながら体脂肪が減り、筋肉量が増えた。これまでは最速154キロの粗削りな素材型投手だったが、「投げていたら勝手にバランスを掴んできて、コントロールも安定してきました」。両サイドに投げ分ける練習に力を入れてきたのもあって、制球面も改善。取り組んできたことが形になり、結果として表れてきている。

 思い返せば、1年目は経験不足の中で先輩たちに必死に食らいついた。まずは投手というポジションに慣れることから始まったプロ生活。走者を出した時の投球や牽制、バント処理など、投手として不可欠な技術の部分で力不足を痛感していた。ただ、決して落胆することなく「ここからどこまで行けるのかな? とワクワクしています」「だいたいが初めての経験なので、思い切りやらないともったいない」と、いつでもポジティブだった。

 気持ちの強さと前向きさが再び支配下契約を勝ち取るエネルギーになったのではないだろうか。田上のポテンシャルと実力を早くから認めていた小久保2軍監督も吉報に「ビックリした。こんなに早くいくとは思ってなかった。自分の子どもより小さいのに、心配でしょうがないです」と笑いを交えて親心を覗かせつつ「何も怖がることなく、キャッチャーミットだけ目掛けて投げてこい」とエールを送った。

「今日からスタートだと思います。育成になった時と変わらず、上を目指してやっていくことは変わらない。これからも、もっと1軍で活躍できるような実力つけて頑張っていきたい」。今年になって2軍公式戦で初勝利をマークしたばかりの田上。底知れぬポテンシャルを秘める右腕は「1軍で初勝利を掴みたい」と次なる目標へ“やることは変えず”燃えている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)

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