「予想通り」の戦力外通告 元MVPのベテラン左腕が独立リーグに身を投じた理由

海外でプレーする選択肢もあったが、日本に残ることを決断【写真:羽鳥慶太】
海外でプレーする選択肢もあったが、日本に残ることを決断【写真:羽鳥慶太】

「メジャーリーガー」との出会いで変わった考え方、海外移籍も模索

 栃木からオファーが届いたのは昨年末。その間、自分のツテも頼って現役続行へ動いた。「海外に行くことも考えていました。メキシコからはオファーもあって」。トレーニングの期間、日本ハムでの後輩にあたり、昨季メキシカンリーグで最優秀投手に輝いた中村勝投手(現オリックス)とも会った。「『めちゃくちゃ楽しいですよ』って言ってましたね。具体的な誘いだったので、真剣に考えていました」。さらに、メキシコよりは日本に近い台湾球界からも話があった。

 野球を続けるため、海を渡ろうとまで考えたのは、プロ生活で出会った名選手たちの影響がある。日本ハムでは多田野数人、巨人では岩隈久志、上原浩治といったメジャーリーグでのプレー経験者と出会った。「同級生の澤村(レッドソックス)もメジャーに行きましたし、西武では松坂さんにも会いましたからね」。彼らの考え方、生き方に触れると、海外で視野を広げることが「自分の将来のためになるのは間違いない。そういう勉強をしてみたい」と思うようになったのだという。

 結局日本に残ったのは「本気でNPBに戻るのを目指すなら、日本にいたほうがいい」という考えからだった。新型コロナの影響はまだ続いている。特に外国人選手のプレー環境がどうなるかわからないという読みもある。言い方は悪いが、何かあったときが吉川のチャンスになる。

 オフの3か月間、肩を休ませた。病院にもかかり、トレーナーに投げ方をチェックしてもらった。「だいぶ良くなった。軽く投げても、いい感じのボールが行っている感じがあります」。コーチ兼任の肩書はあるが、チームからも「メインは選手でいい」と言われている。開幕は4月9日、まずはNPBの新加入選手登録期限となる7月31日までを全力で駆け抜け、チャンスを待つ。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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