敢えて固定しない打線、苦手打者に投手起用…新庄ビッグボス、規格外の“育成術”
杉浦vs岡は昨季5打数2安打2本塁打も「よしと思って。いけって」
「ジャンプって、普通の人間だったらトレーニングを積んで、いつクリアできるか。俺は最初にクリアを求めて怪我をして、なんで飛べなかったの? という方。怪我をする方が先。バイクに乗っていて、こけそうになったらみんなブレーキするでしょ。俺はアクセルを吹かすんですよ。そしたらタイヤが沈んでくれて立ち上がって、こけずに済むから」
投手起用にも、その精神が垣間見えた。6日のロッテ戦、2点リードの6回2死二、三塁。打席に岡を迎えたところで、先発の加藤に代えてマウンドに送ったのが杉浦だった。岡vs杉浦といえば、昨年サヨナラ弾を浴びたことはファンの記憶に新しいだろう。昨季の対戦成績は5打数2安打2本塁打と相性は悪い。しかし、ビッグボスは「杉浦君が去年、岡君に打たれていたから、ここで、よしと思って。いけって」とあえて起用したのだった。
「1回それ(苦手意識)を取り除かないと、ずっと引きずってしまう。“岡君来た。代えよう”では成長にはならない」という、成長のための親心。結果的には初球が暴投となって1点を失い、ストレートの四球で歩かせた。その後エチェバリアに適時打を許して同点に追いつかれたが「こっちは攻めているからね。攻めに行って、なっただけであって」と右腕をかばうと「今シーズン岡君は全部、杉浦君いったろうかな」と不敵に宣言した。
未来への種を撒くビッグボス流の“育成術”が実を結ぶ日は訪れるのか。若い選手たちの成長がチームの原動力になる。
○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2011年から北海道総局で日本ハムを担当。2014年から東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。
(町田利衣 / Rie Machida)