先輩のトレードで「涙を堪えるのが…」 中日・京田陽太が名古屋を奔走した日

中日・京田陽太【写真:荒川祐史】
中日・京田陽太【写真:荒川祐史】

2学年先輩の加藤匠馬がロッテにトレード…妻から「何もしなくていいの?」

 裏表なく竹を割ったような性格で、いったん懐くととことん。プロ6年目を迎えても、中日の京田陽太内野手は何ら変わらない。今季も開幕から打撃で苦戦。心配した知人たちは、こぞって妻の葉月さんに「陽太の様子は大丈夫?」と連絡を入れる。そんな“放っておけない男”を作っているのは「包み隠さぬ愛」と「行動力」。10か月前のある日も、感謝を伝えるべく名古屋市内を奔走していた。

 表向きは、新天地に旅立つ前途を祝していた。「でも、正直つらかったです」。昨年6月15日、加藤匠馬捕手のロッテへのトレードが発表された。グラウンドで共に戦ったチームメートという存在ではとどまらない。私生活でも長く時間を過ごした特別な先輩のひとりだった。

 日大の京田と、青学大の加藤。同じ東都リーグとはいえ、2学年下で大学時代は接点がなかった。親交を深めたのは、プロに入ってから。口数が多くなく無骨ながら“来るもの拒まず”の優しい捕手は、京田にとって身近で心を許せる兄貴分だった。新幹線移動の際、普通なら前後に席をとるが、あえて隣を指定することも。「きっしょ(笑)」と言われながらも、互いに気を使わない空間だった。

 特に加藤が1軍で台頭した2019年には、よく食事にも出かけた。「一緒にプレーできてうれしかったですね」。ただ、2020年以降は捕手陣の勢力図も大きく変化。出場機会を得られない加藤にとっては、ロッテに移籍することが大きなチャンスなるのも分かっていた。

 球団からトレードが発表された日、プロ人生で初めて2軍に身を置いていた京田は、ちょうど名古屋にいた。うまく気持ちを整理できないままナゴヤ球場から帰宅すると、愛妻からふと言われた。

愛妻にも感謝「ひと言がなければ、何もしないままでした」

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