騒動が続く「審判の判定」 元捕手が語る“本音と注文”「一貫性ないのは困る」

積極的にコミュニケーション「いい関係を築いておくことに越したことない」

 現役時代には球審に最も近いポジションにいる捕手として、審判団と積極的にコミュニケーションを取るよう心がけていたと言う。「春季キャンプを訪れる審判団には、野球以外の雑談を含めて話しかけていました。いざ試合となった時、微妙なボールの判定に対して思わず『入ってませんか?』『そこは取ってもらえませんか』と言っても嫌味に受け取られないように、いい関係を築いておくことに越したことはありません」と明かす。

 最近は“AI審判”導入の論議も盛んだが、野口氏は「人間味が薄れるなどの論議以前に、根本的な疑問があります」と首をひねる。「機械である以上、誤作動もありうる。たとえ0.1%であっても、“判定なし”となったり、明らかにど真ん中の球をボールと判定した場合、いったい誰が責任を取るのか。“ノーカウント”では、投手側が球数を損することになります」と問題提起する。

 もちろん、一方で「審判はルールによって守られているわけですが、そこにあぐらをかいてほしくない。技術向上に努めてほしいのは当然です」と釘を刺す。「人によってストライクゾーンの広い、狭いがあるのはやむをえない。プレーヤー側が傾向を把握し、対処すべき問題と言えるでしょう。ただし、1試合のうちで同じコースを取ったり取らなかったり、一貫性がないのは困る。一部の若い審判員にはそういう判定も見受けられます」と指摘するのだ。

 現場を知る者ならではの気付きもある。最近は、球審がホームベースの真後ろでなく、内外角どちらかに寄っているケースが目立つと言う。「ファウルチップが怖いのか、捕手の後ろに隠れるようにしている球審がいます。ああいう位置では正確な判定ができないはず。ファウルが怖いなら、昭和時代のように、体がすっぽり隠れるくらい大きなプロテクターを持ってくればいい」と提言。また、捕手の背中に手を置く球審もいるが、「口には出しませんが、実はあれ、捕手としては気になるのでやめていただきたいのですよ」と苦笑した。

 常に両チームが判定に100%判定に満足することは、ほぼありえない。審判とチーム側がお互いに技術を磨きながら、良好な関係構築に努めることが求められているのかもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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