手術で40針…溢れた涙「自分の手じゃないみたい」 元中日ドラ1が直面した“激変”

昨季限りで現役を引退した元中日投手の鈴木翔太氏【写真:荒川祐史】
昨季限りで現役を引退した元中日投手の鈴木翔太氏【写真:荒川祐史】

昨季限りで引退した鈴木翔太氏、血行障害から目指した再起

 4年経った今でも、鮮明に覚えている。プロ5年目を迎えていた2018年の夏場、ジョギングをしていると、やけに右腕がだるかった。「パッて右手を見たら、指が真っ白でした」。昨季限りで現役を引退した元中日投手の鈴木翔太氏は、血行障害の症状と戦ったプロ人生でもあった。ボールを握る生命線の右手のひらを手術。結果的にその後1軍マウンドに立つことはできなかったが、今でも周囲への感謝は忘れない。

 2013年のドラフト1位で中日に入団。高卒4年目の2017年に5勝を挙げて頭角を現した矢先だった。2018年の春先に人差し指が白くなる症状が出た。「俊哉さんと同じだなと思いました」。チームメートで4学年上のドラ1左腕・岡田俊哉投手が前年に血行障害の手術をしていただけに、事態を飲み込むのは早かった。

 体調や時期によって症状に大小あり、9月には1軍で2試合に登板。シーズン後の秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」にも参加したが、状況は全く改善せず。岡田を含めた様々な人に相談した。ボールを握る右手にメスを入れる怖さは、言うまでもなかった。それでも、現状のままで良くなる保証もない。「この感じが続くのは嫌だなと。もしダメだったら、仕方ない」。腹をくくり、手術に踏み切った。

 実に40針を縫った。慎重にリハビリのステップを踏み、シーズンに入ってようやくボールが投げられるように。恐る恐る腕を振ると、真っ先に襲ってきたのは絶望だった。

「全部の感覚が変わって、自分の手じゃないみたいでした。どこでボールを放しているかも分からないし、指にかからない。今まで投げることができたボールが、投げられなくなりました」

イップス状態に「もう訳わかんなくなっちゃって」…涙した日も

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