父と挑み続けた希望の轍 バウアーのサクセスロードは自身の醜聞で途絶えてしまうのか【マイ・メジャー・ノート】第7回

独学で野球を学んだ父とともにバウアーは成長を遂げてきた

 米球界の奇才と謳われるバウアーが本格的な野球経験のない父ウォーレンとの歩みを明かしたのは、3年前の夏だった。むせ返るような暑さのクリーブランドで収録したインタビューはFull-Countの公式YouTubeチャンネルで現在も公開中だ。

 同インタビューの中で、バウアーはこう明かしている。

「4人兄弟だった父は、バットやグラブを買ってもらえる余裕のない家庭で育った。だから野球を(本格的に)1度もプレーしたことがない。僕が野球に興味を示すと父は夢中になり、独学で野球を学び続け、お互いに教え合ってきた。親子の絆はこうして深まったんだ」

 息子の夢路を父は伴走した。

 コロラドの大学で科学工学の学位を取得したウォーレンは、マウンドに上がることに並々ならぬ意欲を見せる息子のために独学で投球動作を研究する。バウアーがシアトル郊外の『Driveline Baseball』でオフのほとんどを過ごしていることは広く知られている。同施設にはトレーナーや動作解析のプロが常駐。ボールの回転軸や変化量、速度の計測などを行い、収集した映像データと照合しながらボールの握りや手首の角度、リリースポイントなどに注視して理想の軌道を生む投球動作が追求できる。バウアーはそこで考案した独自のトレーニング法や生体力学に基づく理想的なフォームの習得に取り組んできたが、その姿勢を育んだのが、父ウォーレンだった。

 あの夏の日、バウアーはこうも言った。

「登板すれば目指すのは完投。父の口癖だった『正しいフォームでたくさん投げなさい』がその意思をずっと後押ししている。肩や肘を痛めたことが1度もないのは彼と考えてきた動作解析からの体の使い方を十分に実践できているからだと思う。僕たちの研究はずっと続いている」

球界に波紋を広げたバウアーのスキャンダル

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