父と挑み続けた希望の轍 バウアーのサクセスロードは自身の醜聞で途絶えてしまうのか【マイ・メジャー・ノート】第7回
球界に波紋を広げたバウアーのスキャンダル
“物理オタク”の異名をとるバウアーは、居を構える地元の名門ロサンゼルス・ドジャース入団で父と挑み続けた希望の轍(わだち)を完結させた。が、球界に波紋を広げたスキャンダルは米メディアの好餌となり、ファンのイメージを大きく失墜させた。
今回の醜聞的な出来事で想起したことがある――。アテネ生まれのギリシャ人として初めて大リーグ球団の広報担当となり、大谷翔平投手の移籍1年目の2018年まで40年間エンゼルスの広報部をまとめてきたティム・ミード氏がかつてこんなことを言っていた。
「ギリシャ語には時間を表す言葉がふたつあるんだ。時計やカレンダーと同じように日々流れていくそれが“クロノス”。英語のタイミングと重なるのが“カイロス”。歴史や人生が変わるような出来事を作る時間がこれになるね」
汚れなき2つの時間軸で紡がれてきたバウアーの父子鷹物語には、読者を突き放すカイロスが残った。
○著者プロフィール
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続ける在米スポーツジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。シアトル在住。【マイ・メジャー・ノート】はファクトを曇りなく自由闊達につづる。観察と考察の断片が織りなす、木崎英夫の大リーグコラム。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)