知的障害のある球児に開かれた扉 豊川特別支援学校が連合チームで愛知県予選参加
鹿児島特別支援学校に続く県大会参加、今後の道を探る1つの指針に
打撃が得意という林くんは、この日の練習会でも力強い大きな打球を何度も外野へかっ飛ばした。「守備とスライディングが苦手」と言い、練習会後半にはスライディングの特別レッスンを実施。コーチにコツを教えてもらうとすぐに上達し、自信を深めた様子だった。
29日には連合チームとして初めての練習試合に参加する。「楽しみな気持ちと緊張が半分半分です」と照れくさそうに話す顔には終始、満面の笑みが浮かぶ。連合チームには合計18人が集まる予定で、林くんは得意の打撃を生かしながら外野のレギュラー獲りが目標。県予選に出場するためのユニホームは現在製作中で、胸には「TOYOHASHI SSS(Special Support School)」と入る予定だ。
夢の実現に向けて自分の想いを周囲の大人たちに伝えられたのも、夢プロジェクトの練習会に参加して、1人ではなく大勢で野球をする楽しみ、ゲーム形式で練習する充実感を知ったから。主催する久保田さん、コーチとして活動をサポートする元ロッテ・荻野忠寛さん、そして練習会で出会った同じ夢を持つ仲間たちの存在にも大きく感謝。「皆さんのサポートのおかげ。精一杯頑張ります!」と力を込める。
鹿児島では、2016年から鹿児島特別支援学校が連合チームとして県大会に出場し、2019年には白星を飾っている。だが、知的障害がある球児が練習や試合に参加できる環境はまだ整っておらず、今回の林くんのような例は全国でも稀だが、特別支援学校へ通う球児にとって今後の道を探る1つの指針となりそうだ。
愛知大会は7月2日に開幕する予定。中日・石川昂弥内野手のファンで「長打が魅力。尊敬しています」と話す林くんは、まず1安打、そして1勝を目指し、夏に向けて準備を進める。
(佐藤直子 / Naoko Sato)