他球団から「セコい」、捕手からは「疲れる」 中日・柳裕也に送られる“最高の称賛”

中日・柳裕也【写真:荒川祐史】
中日・柳裕也【写真:荒川祐史】

直球は142キロでも「できることが多すぎて、要求通りに投げてくれる」

 ストレートの平均球速は142キロ。リーグ平均と比べても3キロあまり遅い。150キロ後半が当たり前のスピード全盛の時代とは逆行する。カーブ、カットボール、チェンジアップなども駆使して抑える姿は、時に見る者には物足りないかもしれない。ただ、結果が全てのプロ野球。自らが生きる術を知っている。

「柳をリードする時が、一番疲れる」

 正捕手の木下拓哉をはじめ、中日の捕手陣にとってはひとつの共通認識。3年目の郡司裕也が、その言葉を補足する。「全部がカウント球で、全部が決め球。できることが多すぎて、要求通りに投げてくれるので、キャッチャーの責任はすごく感じます」。パワーピッチャーとは一線を画した投球の妙こそ、らしさに他ならない。

「今年も普通にやれば、普通に勝つだろうな。セコいことしてくるもんな」

 今春のキャンプ。ある他球団の関係者はこう言った。批判ではなく、ほぼ白旗同然の褒め言葉。多彩な変化球や制球力だけでなく、わざとタイミングを変えて投げて打者を翻弄することも。横浜高、明大と名門で鍛え上げられたフィールディングも一級品。ただ“いい球”を投げれば勝てるほど甘い世界じゃないからこそ、この上ない嫌らしさに他球団は地団駄を踏む。

 エースかと問われれば、まだ自身は首を横に振る。「大野さんっすよ」。その肩書きよりも、1アウトでも多くマウンドに立ち続けることを求める。老練な28歳は、頼もしさを増していく。

○著者プロフィール
小西亮(こにし・りょう)
1984年、福岡県生まれ。法大から中日新聞社に入社。石川県や三重県で司法、行政取材に携わり、中日スポーツでは主に中日ドラゴンズやアマチュア野球を担当。その後、「LINE NEWS」で編集者を務め、独自記事も制作。2020年からFull-Countに所属。

(小西亮 / Ryo Konishi)

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