岩橋玄樹さん、夢の東京ドームで巨人戦始球式 “休養”も打ち勝った“自分との戦い”

東京ドームでの始球式に登場した歌手の岩橋玄樹さん【写真:小林靖】
東京ドームでの始球式に登場した歌手の岩橋玄樹さん【写真:小林靖】

夢への歩みは“休養”で一時止まる、それも必ず戻ってくると信じたファン

 ここで一旦、夢への歩みは止まる。私も同じ頃、新たなチャレンジのため、今の仕事に就いている。詳細は省くが、私ができることは彼を応援していたファンとともに復帰を祈ることしかできなかった。自分から連絡することも我慢した。必ず戻ってくる時に向こうから何かアクションを起こしてくれるはずだ、と思った。

 彼は辛かった時期を乗り越え、パワーアップして戻ってきた。野球に関わる仕事に再びしている姿を見て、安心した。SNS上でファンが喜んでいる様子も見ることができて、止まっていた時計の針が動き出したことが嬉しかった。

 イースタン・リーグで行った始球式から4年、岩橋さんは自分の力で夢への扉をこじあけた。野球や巨人への思いが実り、5月6日~8日に巨人が実施したイベント『ジャイアンツ・最強ガールズの集い』のアンバサダーに就任し、5月8日に巨人-ヤクルト戦で始球式を務めたのだった。

 この様子は大々的に報じられ、巨人公式YouTubeでも舞台裏が公開になっている。岩橋さんは球団を通じ「憧れの東京ドームで投げさせていただき、本当に嬉しかったです。マウンドから見る光景は非常に特別なもので、このような経験をさせていただき、大変感謝しています。両チームの選手が見ていると思うと緊張しましたが、無事に投げることができて良かったです。ありがとうございました」とコメントを寄せた。投球フォームは美しく、場内がどよめく、“本物”の投球だった。

 今回、筆者自身がこの始球式に携わることはなかったが、とても感慨深い1日となった。岩橋さんの苦悩、背景を知っている人からすると、他の始球式とは重みが違う。充電期間を経て、苦しみを乗り越え、5年越しの夢を叶えた一球だったのだ。心の底から岩橋さん本人に拍手を送りたいし、ずっと待ち続けたファンの皆さんにも「ありがとう」と伝えたい。

 岩橋さんは努力家で、人への感謝を忘れない人だ。その心に引き寄せられた人たちが今回も彼の夢への実現を後押ししてくれたと察する。『特別な思いを持ってマウンドに戻ってきた』――。まるで選手の記事にあるようなフレーズだが、今回はこの言葉が相応しい。

○著者プロフィール
楢崎 豊(ならさきゆたか)
1980年3月、東京都生まれ。東海大高輪台から東海大を経て、2002年報知新聞社入社。巨人、横浜の球団担当記者ほか、アマチュア野球、約3年間、ニューヨーク・ヤンキース中心のメジャーリーグを担当。雑誌「報知高校野球」や「月刊ジャイアンツ」の編集者を経て、2019年からFull-Countで執筆。現在は編集長。少年野球などの悩みを解決する野球育成サイト「First-Pitch」でもディレクションを行う。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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