2軍で0勝16敗の日ハム右腕を変えた“エースの振る舞い”上沢直之との忘れられない3週間
ドラ6入団の上沢が這い上がれた理由「メンタルが人間じゃないんです…」
今年5月には4勝、防御率0.58という素晴らしい成績で月間MVPを獲得したように、大怪我を乗り越えた上沢は日本ハムのエースとして着々と実績を積み上げている。新庄剛志監督も「上沢君にはなんか安心感があるんだよね…」と絶大な信頼を置く。
ただ、上沢も最初からそれほど大きな存在だったわけではない。ドラフト6位という下位指名での入団。入団当時はとにかく体力がなかった。2軍戦でも1イニング投げればヘロヘロになっていたほどだ。
田中は上沢との自主トレ中、決めたことを「とにかくやり切る」という姿勢に驚かされてばかりだったという。例えば両翼のポール間を1.5往復するダッシュで、年上の上沢に引っ張られてばかりだった。「あの人は本当にブレないですね。やると決めたことに妥協がないんです。メンタルが『人間じゃない』んです」。それこそが“這い上がれた”原動力だという大きな学びを得た。
田中は2018年のドラフト3位で指名され、柳ヶ浦高(大分)からドラフト3位で入団した。将来性に注目した複数球団が、上位指名候補に挙げていたほどの素材だ。木田2軍監督は当時、フロントの一員として田中の獲得に関わっている。「体調を整えて、しっかりストライクゾーンに投げられれば、これくらいはやる選手ですよ」。時間はかかったが、ようやくスタートラインに立てた。
入団時の背番号「46」が、今は「146」。まず2軍戦にしか出場できない育成選手から脱し、背番号を2桁に戻すという目標がある。そんな未来をはっきり描けるようになった上沢との自主トレでは、ひとつ大きな“落ち”もついた。「一緒にコロナにかかっちゃいましたからね……」。まだ22歳。一つずつ階段を上っていけば、それすら忘れられない思い出になる。
〇著者プロフィール
羽鳥慶太(はとり・けいた)神奈川で生まれ、愛知、埼玉などで熱心にプロ野球を見て育つ。立大卒業後、書籍編集者を経て2001年、道新スポーツに入社。プロ野球日本ハムを長年担当したのをはじめ、WBCなどの国際大会、アマチュア野球、平昌冬季五輪なども取材する。2021年よりFull-Count編集部所属。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)