大谷翔平から“三振を奪う”ための投球術 ヤ軍元エースとの仮想対決で見えた「野球の奥深さ」【マイ・メジャー・ノート】第8回
強雨のヤンキー・スタジアム、デビッド・コーン氏への“お願い”
6月1日(日本時間2日)、ニューヨーク。聖地ヤンキー・スタジアムはエンゼルス戦を約2時間後に控え、強雨に見舞われていた。西の空を稲妻が切り裂くサンダーストームが収まるのを待つしかなかった。
こういう時間はしばしば貴重である。
記者席の先にある地元局「YESネットワーク」の中継室に向うと、幸運にもヤンキースの元エースで通算194勝を挙げたデビッド・コーン氏がブースの外にいた。僕は意を決し、こう切り出した。「バッテリーを組ませていただけませんか……」。ぶしつけなお願いであったが、眼鏡の奥の眼差しは柔らかかった。
中継室から出た廊下がその空間になった。大学の途中まで続けた野球でずっと捕手だったことを伝えると、サインの取り決めからスタートした。持ち球は5球種。1=ストレート、2=カーブ、3=スライダー、4=チェンジアップ、5=スプリット。要求する球種は「最初に出す指の本数」がキーになる。つまり、2-3-1-2と出せば、2つ後の「1」が求める球種でストレート。1-3-2-4なら次の「3」でスライダー、3-1-2-4-5なら3つ後の「4」でチェンジアップとなる。メジャー流の組み合わせの一つだそうで、現役時代は見破られないように最初に出す指をアウトカウントと重ねたり、走者を二塁に置いた場面ではグラブで触る体の部位をキーとしたこともあるとコーン氏は明かす。
想定したのは大谷翔平との対峙。走者の有無、アウトカウントなどは除外する1打席の勝負。ストライクとボールの判定は任され、費やせるのは最大6球までが条件だった。サインは先の通りに組み合わせて出す。いざ、勝負!