大谷翔平から“三振を奪う”ための投球術 ヤ軍元エースとの仮想対決で見えた「野球の奥深さ」【マイ・メジャー・ノート】第8回
コーン氏が首を“振らなかった”理由に潜む「野球の奥深さ」
時間の制限がありカウント1-2から勝負を挑み“都合よく”大谷翔平を封じたのだが、たどったように、4球の組み立てにはそれぞれの根拠を添えた。1つの球種でも左右と高低のコース、そして見せ球を加えれば、配球は幾重にも広がる。
付言すると、勝負球を選択する際にコーン氏が首を1度も振らなかった理由には、打者心理を読んでいたこともあった。
「たとえば、2-0や2-1のストレートカウントで変化球を投げたい場合、首を振れば相手にヒントをあげることになってしまう。打者との駆け引きは投げる前から始まっています」
技術に付随する投球術の淵源(えんげん)を惜しげもなく開示すると、コーン氏は最後、こんなスリリングな秘話を披露してくれた。
「アンディ・ペティットはグラブを顔に近づけてサインをうかがっていたけど、覚えています? そこから首を右、左と動かしていた。あれはね、キャッチャーのサインを嫌っているのではないんですよ。『インコースとアウトコースの指示』ですよ(笑)。あと、アンディがうなずいた時は、その前に投げた球と同じ球を投げるという意思表示。こうすることでテンポを良くして、自分のリズムを作って打者を打ち取っていくんです」