わずか1勝でもデータでは“月間MVP” 燕村上は異次元の高数値…セの6月振り返る

中日・大野雄大【写真:荒川祐史】
中日・大野雄大【写真:荒川祐史】

月間3勝が3人、防御率1点台は4人と“拮抗”

【投手部門】
 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標「RSAA」を用いる。

RSAA=(リーグ平均tRA-選手個人のtRA)×投球回数/9

 ここでのRSAAはtRAベースで算出する。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計。

 tRA={(0.297×四球+0.327×死球-0.108×奪三振+1.401×被本塁打+0.036×ゴロ-0.124×内野フライ+0.132×外野フライ+0.289×ライナー)/(奪三振+0.745×ゴロ+0.304×ライナー+0.994×内野フライ+0.675×外野フライ)×27}+定数

 という式を用いて、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標である。

各チームのRSAA上位2名は以下の通り。

ヤクルト:清水昇3.16 小川泰弘3.04
阪神:ガンケル2.97 伊藤将司2.92
DeNA:東克樹2.31 平田真吾1.79
巨人:鍬原拓也0.90 ビエイラ0.64
広島:大瀬良大地2.96 矢崎拓也2.61
中日:大野雄大3.68 柳裕也2.92

 6月の投手陣は成績が均衡していた。月間最多勝は青柳晃洋、伊藤将司、実際の月間MVPを獲得した小川泰弘の3人が3勝で並び、防御率は4人が1点台だ。

大貫晋一1.54
小川泰弘1.55
伊藤将司1.59
大野雄大1.80

 奪三振率で見ると、九里亜蓮と青柳が9個台を記録している。また、救援陣では清水昇が2勝4ホールド、防御率0.00、奪三振率13.5、WHIP0.69という好成績を残しており、RSAAによる貢献度を見てもヤクルトで1位となっている。6月のセ・リーグセイバー目線による評価で良い数値を示したのは、大野雄大である。

大野雄大(中日)
登板4 投球回30 1勝1敗 防御率1.80
QS率75% 奪三振率6.60 WHIP1.00 被本塁打0

ゴロ47 内野フライ3 外野フライ34 ライナー4 GB/FB1.27
奪空振率10.8%

 混沌とした6月のセ・リーグ投手陣の中でも投球内容の良さから評価するRSAAが最も高かった大野雄大をセイバーメトリクス目線で選ぶ6月の月間MVP投手部門に推挙する。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。コミュニティサイト「鳥越規央のデータ野球部」を開設。
https://butaiura.fan/community/torigoenorio/

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