3年ぶり復活した音色に「心が高鳴った」 本塁打を呼んだスタンド“応援”が持つ意味

夏の神奈川高校野球に戻ってきた吹奏楽部の様子【写真:大利実】
夏の神奈川高校野球に戻ってきた吹奏楽部の様子【写真:大利実】

鎌倉学園、川和、横須賀…監督、選手がスタンド応援への思い語る

 夏の神奈川大会に、ブラスバンドが奏でる“音”が3年ぶりに戻ってきた。神奈川高野連の取り決めによって、今春の4回戦から吹奏楽部の応援が解禁され、今夏は1回戦から可能に。今の3年生は、新型コロナウイルスが蔓延した2020年に入学した世代であり、多くの選手にとっては、演奏のもとでプレーするのは初めてのことになる。

 7月10日、保土ヶ谷球場で行われた1回戦。日曜日ということもあり、チケット売り場の列は隣接するサッカー場まで伸び、内野席の6~7割は観客で埋まった。

 第1試合は、ともに創部101年を迎えた横須賀対鎌倉学園の伝統校対決。鎌倉学園が6-2とリードした8回裏、無死一塁の場面で、アッコちゃん(アニメ「ひみつのアッコちゃん」の“スキスキソング”)が流れた。バッターが代わってもエンドレスで続き、1、2年生の野球部員がリズムに乗って踊り続けた。

「いつしか、鎌学の定番の応援歌になりました。スタンドの部員には、『自由演技』の時間があって、自分で考えた振り付けで踊るのが伝統になっています。本来はスタンドを走り回って、盛り上げていくのですが、コロナ禍の今はそこまではできないですね」

 教えてくれたのは、同校のOBである多々納俊万部長だ。毎年5月頃から、1、2年生は応援練習に入り、校舎の屋上で大きな声を出すことから始めるという。いわば、野球部の“通過儀式”のようなものだ。

「今年、コロナ禍に入ってから初めて、応援練習を再開しました。屋上で、腹から声を出す。応援練習で大事にしているのは、“殻を破る”。うちの生徒たちは真面目な子が多く、そういうことが苦手で……。大きな声を出すことや、人前で踊ることで、自分をさらけ出す。応援練習をきっかけにして、グラウンドでも自信を持ってプレーできる選手が出てきます」

 今大会、スタンドでの「声援」は自粛となったが、伝統の応援練習、そして夏の応援を経験できたことは、今後のプレーにもきっと生きていくはずだ。

神奈川で今春から復活したブラスバンド応援、夏の風物詩が球場に戻る

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