阪神の意識“変えた”指導を子どもたちへ… 選手を伸ばす「技術を言葉にする力」

「BCSベースボールパフォーマンス」の代表・前田健さん【写真:編集部】
「BCSベースボールパフォーマンス」の代表・前田健さん【写真:編集部】

BCSベースボールパフォーマンス・前田健代表は野球人から信頼の厚い指導者

「走っていろ」「体を開くな」「肘を前に出して投げろ」――。野球の現場からそんな声をなくしたい。子どもから大人、プロ野球選手まで幅広い世代で野球技術の向上をサポートしている前田健さんは、技術を分かりやすく“言語化”できる数少ない指導者の一人だ。現在は投打の動作改善専門のコーチング施設「BCSベースボールパフォーマンス」の代表を務めている。2003年には阪神・星野仙一監督のもと1軍トレーニングコーチとして18年ぶりのリーグ優勝に貢献。慣習にとらわれず、独自の理論を貫く姿勢は今も好評を得ている。

 前田さんは、筑波大学で野球部に所属。筑波大大学院では体力トレーニング論を専攻し、社会人野球の日本石油(現ENEOS)で9年間コンディショニングコーチを務めた。2003年から阪神の1軍トレーニングコーチに就任。2005年に兵庫・芦屋市に野球の動作改善専門の個人コーチング施設を開設した。メカニックを細かく分析した著書や、出張指導なども行っている。

「トレーニングコーチ時代も今も私の仕事はコーチです。コーチの使命は選手をうまくすることですから、確実にパフォーマンスを向上させるために必要なことを突き詰めています。例えば、野球の動作の仕組みを追求してきたのも、確実な改善のために原因が分かる必要があるからですし、感覚やイメージでの曖昧な表現を使わずに、動作を言語化して具体的に説明するのも、相手に明確に伝えるために必要だからです」

 野球の技術(動作)向上のためには、それぞれの技術を実現するために必要な関節の動きが動くことが重要だ。そうした技術のベースとなる部分、体を作るトレーニングや身体の使い方を指導している。

「こうしたことは、本来コーチが選手を確実に変えるために当たり前に必要なことですが、その当たり前のことをするのが私の指導ポリシー。動作の仕組みの部分をきちんと説明する。これは技術指導をする方にとっては必要なことだと思っています」

 自分の中で確信がないと、伝える言葉は曖昧になる。なので『投手はとにかく走っておけばいい』などという根拠の分からない指導は好きではない。もちろん走ることは大切だ。それよりも、きちんと手段と目的の関係を指導者と選手の間で理解できているかどうかの方が重要だ。

2003年から2年、阪神で1軍、2軍でトレーニングコーチを務め、独立

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