右膝から“危険信号”も「痛いと言ったら終わり」 元ハム外野手が伝える“教訓”

自己最多83試合に出場も大きな代償…右膝の前十字靭帯断裂で手術

 この年、谷口さんは自己最多の83試合に出場。しかし、いつ右膝の痛みが爆発するか分からない状況で、だましだましグラウンドに立っていた。シーズンオフ、物を拾うとすると右膝が抜けたり、一度止まって動き出すと崩れ落ちたりした。病院で検査した結果、右膝の前十字靱帯が断裂していた。手術以外の方法はなく、長期離脱とリハビリ生活を余儀なくされた。

 1か月間、ベッドから立ち上がることもできない寝たきりの生活が続いた。日常さえ取り戻せないかもしれない不安に襲われた。しかも、谷口さんが目指すのはプロ野球の1軍でのプレー。ゴールは、あまりにも遠かった。退院する時には入院前より太ももが6センチ細くなり、自慢のヒラメ筋は消えていた。

「入院中にお世話になった看護師さん、ずっとリハビリに付き合ってくれたトレーナー、リハビリ中にも足を運んでくれたファンの方々、励ましてくれた人たちにもう一度プレーする姿を見せたい一心でした」

 谷口さんは2018年、グラウンドに帰ってきた。実戦復帰まで半年を要する大きな怪我を乗り越えた。だが、右膝は怪我をする前の状態には戻らなかった。故障後の1軍出場は2019年の30試合出場が最多。キャリアのピークを迎える年代の29歳だった昨年限りでユニホームを脱いだ。

 右膝の怪我がなければ――。あの時に無理をせずストップしていたら。ファンからは惜しむ声が上がる。ただ、谷口さんは自身の怪我が次のステージに生きると前を向く。少年野球の子どもたちや指導者、保護者に経験を伝えていくつもりだ。

「子どもたちの上手くなりたい、試合に出たいという気持ちはすごく大事です。その思いを尊重しながら、怪我のリスクを抑えるのが自分も含めた指導者、大人の役割だと思います」

 子どもたちが体に痛みや違和感を口にしやすい環境をつくる。自分の体に興味を持ってもらい、クールダウンやストレッチの大切さを説明する。谷口さんだからこそ、子どもたちの心に届く言葉や指導がある。

(間淳 / Jun Aida)

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