選手の頑張りに監督が涙 神奈川で公立唯一の8強、藤沢清流が手にした“誇り”
エース・木島直哉は誇りを胸に次の舞台へ、大学進学で野球続ける
エースで4番として、大きな存在感を示したのが、185センチ90キロの立派な体格を誇る木島直哉だ。
神奈川で生まれ育った木島は、小学6年から中学3年まで、親の仕事の都合もあり、名古屋で過ごしていた。高校入学にあたって神奈川に戻ることが決まっていて、いくつかの候補から選んだのが藤沢清流だった。中学3年時、春の県大会で慶応義塾を破り、ベスト8にまで勝ち進んだことが決め手となった。
130キロ台中盤のストレートを、右バッターのインコースに投じるクロスファイアーを武器にする。2年時はスタミナに不安があったが、日々のトレーニングと投げ込みによって、9イニングを投げ切る体力を身につけた。
この夏は、5回戦で湘南学院を1-0の完封で下すなど、持てる力を存分に発揮。準々決勝は、得意のクロスファイアー、さらに春以降に覚えたツーシームを駆使しながら、11回まで投げ抜いた。
敗戦後、応援席への挨拶を終えたあと、エースの木島だけがひとり残り、泣きながらグラウンドに目を向けていた。そこに、榎本監督が歩み寄り、声をかけた。
「4年後、プロになって帰ってこいよ」
さらに、ベンチ内の片づけを終えたあとにも、ひとりでグラウンドを見つめる姿があった。
「ベスト8に入れた公立は、自分たちだけ。誇りを胸に持っていいのかなと思います。ベスト8まで勝ち残れた光景を忘れないで、これからの自分の野球人生の胸に持っておきたい。そう思って、最後にグラウンドを見渡していました」
その木島の姿を見つけ、近くにそっと寄っていったのがキャプテンの田嶋だ。
「この1年間、エースとして先頭に立って走り続けてくれたので、『お前が一番よく頑張った。お前のおかげで、ここまで来られた』と言いました。あとは、『ここから先がある。ここで終わりじゃないぞ。この経験を生かして、自分たちの代表として、上で戦ってほしい』と伝えました」
木島の目標は、4年後のプロ入りだ。仲間の想いも背負って、大学野球で戦う。