戦国・千葉に「来たからには甲子園」 鳥取から来たVの使者・市船橋“森本ツインズ”
左腕・哲星「哲太と競い合ってきたから今の自分がある」
哲太の強肩は当然、木更津総合サイドも承知の上。だからこそ本塁に突入することができなかったのだろう。哲星も「最近は、センターにゴロを打たれる分には、二塁走者を返されることが少なくなりました。センターに打たせれば何とかなる、打たせるならセンターと思っています」と、兄への全幅の信頼を口にした。
そして9回、先頭で第5打席に入った哲太は、打球がフェンスを直撃し転々とする間に、俊足を飛ばしてダイヤモンドを1周。哲星は「9回に打つのではなく、序盤に打ってほしかった」と、1点ビハインドの2回2死満塁で一邪飛に倒れていた哲太をからかった。
森本ツインズは鳥取県出身。小学3年から野球を始め、地元のスポーツ少年団、南部町立南部中を通じて同じチームでプレーした。小学5年から中学3年までは、哲太が捕手で“双子バッテリー”を組んでいた。首都圏への引っ越しを機に、千葉の名門・市船橋に入学し、同学年にプロ注目の捕手・片野優羽(3年)がいることもあって、哲太は外野手に転向。「強豪ぞろいとわかっていて千葉に来た。来たからには甲子園に行こうと2人で話していたので、夢が1つかないました」と哲太が口元をほころばせた。
哲星は「哲太は小さい頃からライバル。哲太より上になってやろうと競い合ってきたからこそ、今の自分があると思っています」と話す。お互いに、負けてなるかと対抗意識を燃やし、一方で誰よりも信頼し合っている。哲太は右投右打、哲星は左投左打。顔はよく似ているが、利き腕も持ち味も違い、だからこそ1+1が2では収まらない。甲子園でどんな伝説を紡いでくれるのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)