「史上最悪のチーム」が初の4強入り ”30点差大敗”から始まった都立富士森の挑戦

昨秋の練習試合で30点差負け→今夏は駒大、日大鶴ケ丘とシード校撃破

 このチームがスタートした昨秋、広瀬監督はナインを「史上最悪のチームだ」とあえて“罵倒”したことがあった。主将の小牧颯太内野手(3年)は「最初はエラーが多かったし、打てなかったし、詳しくは覚えていませんが、八王子北との練習試合では30点差くらいつけられて負けました」と振り返る。ただ、この屈辱がむしろ、創部最高の快進撃のきっかけになった。

「がらっと意識を変えようと、みんなで話し合いました。それまではみんながバットを長く持って、『自分の打撃をする』という感じだったのですが、そういう考えは捨てました。全員が低い打球を打って、相手のエラーも誘いながら、次の打者につないでいく野球に切り替えました」と小牧は明かす。平日は学校の規定で午後6時には練習を終了しなければならず、時間が足りないのが悩みの種。広瀬監督が明かした午前6時からの素振りは、それを補うために選手たちが自然発生的に始めたものだった。

「コツコツ練習してきた結果、富士森の歴史を塗り替えることができて、充実した3年間だったと思います」と語る小牧の表情に陰りはなかった。一方、これまで「目標はベスト16」と言ってきた広瀬監督は試合後、ナインを前に「先生は今度から『甲子園』と言うようにするぞ」と宣言した。“史上最悪のチーム”は屈辱をバネに、史上最高のチームとなった。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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