強力投手陣で上位浮上の阪神…さらに上行く中日右腕 セイバー目線のセ月間MVP
盤石の阪神先発陣…その数字を上回る中日の2年目右腕
投手部門の評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標「RSAA」を用いる。チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標である。各チームの「RSAA」上位2名は以下の通り。
○ヤクルト 久保拓眞1.85、高橋奎二1.62
○阪神 ガンケル3.88、浜地真澄3.33
○DeNA 浜口遥大4.88、入江大生3.52
○広島 床田寛樹2.03、栗林良吏1.94
○巨人 戸郷翔征2.68、高梨雄平2.14
○中日 高橋宏斗4.93、小笠原慎之介3.58
7月の阪神の投手陣が出色だったことは既に述べたが、特に先発投手陣は圧巻だった。
○ガンケル 3試合、防御率0.00、WHIP0.65、QS率100%
○西勇輝 4試合、防御率0.66、WHIP0.73、QS率100%
○青柳晃洋 4試合、防御率1.00、WHIP0.81、QS率100%
○伊藤将司 3試合、防御率1.17、WHIP0.87、QS率100%
4人が防御率1点台、WHIP1以下、QS率100%を達成している。また救援投手陣の中でも最も目立った活躍をしたのが浜地真澄だ。10試合に登板し、防御率0.00、WHIP0.69、被打率.182、奪三振率10.38とチームに大きく貢献した。だが、そんな阪神の投手陣を超える数値を示した投手がいる。
中日の高橋宏斗である。登板3、投球回21回1/3、1勝1敗、防御率0.84、QS率100%、奪三振率11.81、WHIP0.56、被本塁打1、ゴロ24、内野フライ2、外野フライ14、ライナー1、GB/FB1.50、空振り率17.6%という数字を残した。特に7月29日の広島戦では、8回1死まで打者24人に対してノーヒットピッチングを披露した。25人目の小園海斗が外角低め、見逃せばボールと判定されそうなスプリットを泳ぎながらもセンターに弾き返し安打としたが、その試合でスプリットでの空振り率は脅威の35.3%であった。
スライダーをほとんど投げず、ストレートとスプリットを主体としたピッチングで多くの空振りを取れるのは、リリースポイントや球の軌道が見分けにくいフォームをしているからだと考えられる。セ・リーグ投手陣の中でも投球内容が良かった高橋宏斗を、セイバーメトリクス目線で選ぶ7月の月間MVP投手部門に推挙する。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。