選抜準V近江、逆転勝利の舞台裏 鳴門の好投手・富田を攻略できた糸口とは?

近江・山田陽翔【写真:上野明洸】
近江・山田陽翔【写真:上野明洸】

多賀監督がナインに授けた指示「とにかく大きくリードをとって牽制をさせなさい」

 今春の選抜準V・近江の多賀章仁監督は試合後、ホッとしたように振り返った。7日に行われた第104回全国高校野球選手権大会の大会2日目第4試合。苦しい戦況を打ち破り、鳴門のプロ注目左腕・冨田遼弥投手(3年)を攻略できたカギは走塁戦略にあった。

 初回に先制を許したが、すぐにエース兼4番・山田陽翔主将(3年)の適時打で1-1の同点に追い付いた。だが、2回は野手の2失策が絡んで1点を献上。5回までに3失策と内野の守備が乱れた。攻撃では4回に1死満塁のチャンスを迎えたが、8番・大橋大翔(3年)、9番・小竹雅斗(2年)が2者連続三振。流れは鳴門に傾いているかのように見えた。

 しかし、近江の戦略が中盤以降にじわじわと効いてきた。多賀監督は冨田の特徴を「(徳島大会では)牽制が少なかった」と分析し「とにかく大きくリードをとって牽制をさせなさい」とベンチへ指示。好投手の集中力を揺さぶることで、攻撃に流れを引き寄せることを狙った。5回にバスターエンドランのサインを出したのも、後半戦で流れを掴むための「ギャンブル的な攻め」だったという。

 勝負パンツを着用して甲子園初戦へ挑んだ山田の存在もポイントだ。劣勢ながら投げては13奪三振、攻撃では申告敬遠を含む3打席出塁と貢献し、チームに勝利を引き寄せた。本調子ではなかったが「絶好調や!」と試合前に大きな声で発し、自己暗示をかけていたという。

「山田はエラーが出た時にこそしっかり投げないといけないというキャプテンシーを背負っている。結果的にこういう試合になったが、うちとしては最高の出だしになった」と多賀監督。プロ注目投手攻略により次戦へ勢いを付けられた。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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