どん底1年目からの覚醒 DeNA20年ドラ1入江大生を蘇らせた恩人との“約束”
“息子”からのプレゼントに八馬スカウト感慨「うれしかったね」
それでも八馬スカウトは登板を終えるたびに電話をくれ、手術の際も「俺は信じている」と寄り添ってくれた。作新学院高では同期の西武・今井達也とともに3年夏に甲子園優勝を経験も、3試合連続本塁打を放った強打が注目を集めた。明大進学後に投手に本格専念。そんな“原石”に早くから注目し、素材にべた惚れして追いかけ続けたのが八馬スカウトだった。
入江は「早い段階から見てくださっていたので、期待に応えたい気持ちは強いですね」と感謝の思いを込める。記念球の送り先は「家族」という選手が多い中、縁あってDeNA入団が決まったときから八馬スカウトに渡すことをひそかに決めていた。
「僕自身1年目はちょっと結果が出なかったんですけど、いい結果が出たとしても悪い結果が出たとしても、このプロという舞台に立たないとこの経験は絶対にできなかったと思う。その第一歩はドラフトで獲ってくださったことなので、その舞台に立たせてくれた担当スカウトの方に渡したいなっていう率直な気持ちでした」
八馬スカウトは「俺にくれるの? って思ったけど、うれしかったね」と目を細める。自ら担当した選手たちを「息子みたいなもの」と話し、コロナ禍以前はオフになると自宅に招いて1年間の労をねぎらった。入江から受け取ったボールは現在、自宅に大切に飾られている。
「充実感はあるんですけど、まだまだ自分の結果に満足していませんし、もっと高みを目指してやっていきたいと思っています。チームが勝てればそれが一番いいんですけど、(シーズンは)まだ終わっていないですし、これからも気を引き締めてやっていきたいと思います」と入江。プロの世界に導いてくれた担当スカウトへの恩を忘れることはない。そして八馬スカウトもまた、セットアッパーとしてブルペンを支えるまでに成長した“息子”の姿を、見守り続けている。
○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2011年から北海道総局で日本ハムを担当。2014年から東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。
(町田利衣 / Rie Machida)