スローガンは「他喜昇り」 5年ぶり選抜出場なるか…鍵を握る慶応高の“人間性キャプテン”

慶応義塾高・大村昊澄【写真:大利実】
慶応義塾高・大村昊澄【写真:大利実】

慶応高・大村昊澄主将は監督、チームから厚い信頼

 9月3日に開幕した高校野球秋季神奈川大会。2018年以来、5年ぶりの選抜高校野球大会出場を目指す慶応義塾は、初戦(2回戦)で横須賀学院を10-0の5回コールドで下し、3回戦進出を決めた。森林貴彦監督曰く、「今年のチームは、『みんなでやろう、みんなで勝とう』とする意識が強い代」。その中心にいるのが、小学校でも中学校でもキャプテンを務めた経験を持つ大村昊澄(おおむら・そらと)である。

 伝統校のキャプテンを務めるのは、163センチ65キロと、ひと際小さな体が目立つ大村だ。2、3年生の投票と、首脳陣の意向が合致し、満場一致でキャプテンに選ばれた。小学時代も中学時代(愛知港ボーイズ)もキャプテンを務めており、チームをまとめる力を持つ。

 森林監督は「今年のチームカラーに合ったキャプテン」と評する。

「大村は“人間性キャプテン”と言ってもいいぐらい、気が利いて、周りに声をかけることができる。圧倒的な能力があるわけではないので、『もしかしたら、ベンチキャプテンになるかもしれないよ』と話していたのですが、努力を重ねて、今はレギュラーの座に就いています」

 地区大会ではレフト、県大会では背番号4を着けてセカンドで出場。この日は2番打者として、ミート中心のバッティングで、2安打2四球とつなぎの役割を果たした。

 この大村には、憧れでもあり、理想とするキャプテンがいる。

「慶応大学でキャプテンをやっていた福井章吾さん(トヨタ自動車)に憧れていて、福井さんのようなキャプテンになりたいと思っています。背が小さくても、あれだけのチームを引っ張っている。目標とする選手です」

 昨年夏には、交流のある慶大の先輩の紹介で、一緒にご飯を食べる機会にも恵まれた。

「福井さんは、『主将力』という言葉をよく使われているんですけど、『自分は嫌われてもいい。そのぐらいの覚悟でやっていかないと、チームはまとまらないよ』と教えてもらいました。自分自身も、『周りに厳しく、自分にも厳しく』という覚悟でやっています」

 キャプテンに就くにあたり、森林監督からはこんな言葉をかけてもらったという。

「『お前はプレーだけじゃなくて、それ以外の部分でチームを引っ張っていける存在だ』と言ってもらいました。新チームが始まった当初は、スタメンで出られない時期が続いていたんですけど、とにかく明るく、ベンチでも声を出して、そこに関しては『誰よりもやろう!』と自分の中で決めています」

 その言葉どおり、守備時もベンチに戻った時も、周りの選手に積極的に声をかけ、キャプテンとしてチームを引っ張る姿が見えた。

 近年の慶応義塾は、新チーム結成時にチームが進むべき道をスローガンとして掲げている。少し捻りを加えたスローガンが多いが、今年も“らしい”言葉だった。

新チームの慶應義塾のスローガン、「他喜昇り」に込めた意味

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