敗色濃厚なのに歓喜「何しとるんや!」 両打ちの首位打者が忘れぬ大エース攻略

遠藤攻略への努力が打撃力アップに「インサイドも怖くなくなった」

 結果、ついに遠藤氏を攻略した。「(広島)市民球場で1-7か1-8で負けている試合だった。9回、先頭バッターで打ったんよ。ライト前に。完投目前の遠藤さんからね。俺としたら、やっと打てた。目標達成や。思わずガッツポーズが出たよ。そしたら内田さんに『お前、試合に負けてるのに何しとるんや!』ってどやされたけどね」。まさに会心の一打だったのだろう。正田氏はそれこそ昨日のことのように振り返った。

 この経験は、打撃力アップにつながった。「ゆっくり、速くを覚えたからインサイドも怖くなくなった。外を待っていても、インサイドに来たときに、それを使えるからファウルで逃げることができた。外だけ待っていればよかった。だから打率も残せた」。1987年の首位打者は、スイッチヒッターでは史上初の偉業。さらに翌1988年も首位打者に輝いたが、これには遠藤氏との“闘い”も役立っていたわけだ。

「よく打者が投手を育てるとか、投手が打者を育てるとかいうけど、わかるよ。それ」と正田氏はしみじみと話す。そしてまた、こう付け加えた。

「内田さんに練習する環境を与えられ、マンツーマンで教えてもらって、正月もずっとバットを振らされて、努力して、首位打者をとったけど、練習以外で育ててもらったのはやっぱり遠藤さんという存在が大きかった」

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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