なぜ40歳大ベテランを突如スタメン起用? 敗戦も手応え…DeNA三浦監督の“目論見”
レギュラーシーズンでの今季スタメンは4月の一度のみ
■阪神 2ー0 DeNA(CSファースト・8日・横浜)
日本シリーズ進出を争うクライマックスシリーズ(CS)が始まった。セ・リーグ2位のDeNAは8日、本拠地・横浜スタジアムで行われたファーストステージ初戦で3位・阪神に0-2で敗戦。“ハマスタ”史上最多記録の3万3033人に上った観客を最も驚かせ、沸かせたのは、40歳の藤田一也内野手が「6番・三塁」でスタメン出場したことだった。楽天から10年ぶりに古巣へ復帰した藤田の先発は、今年のレギュラーシーズンでは「7番・二塁」で起用された4月16日・ヤクルト戦の一度きりだった。
最大の見せ場は4回の守備だ。1死走者なしで阪神・佐藤輝が放った三遊間の痛烈なゴロをダイビングキャッチ。正確な送球で刺した。この瞬間、スタンドからは拍手が沸き起こり、しばらく鳴りやまなかった。
打っても5回先頭で、一塁手・原口のミットを弾く強襲安打を放ち出塁。続く森敬斗内野手の送りバント失敗などで、得点には結びつかなかったが、敗戦の中で存在感はピカイチ。三浦大輔監督も「勝つためにやっていますから、本人も満足はしていないでしょう」と言いつつ、「状態が良さそうですし、よく守って、ヒットも打ってくれました」とうなずいた。
DeNAはこの日、阪神先発の右のサブマリン・青柳に対し、今季打率.300の宮崎敏郎内野手と17本塁打のネフタリ・ソト内野手をスタメンから外し、左打者を並べて臨んだ。レギュラーシーズンでも青柳対策として、直近3度の対戦で使ってきた手だが、その時に宮崎に代わり三塁を守ったのは、柴田竜拓内野手だった。三浦監督は「柴田は(青柳との)対戦成績が良くなかった(今季9打数1安打、対戦打率.111)。昨日の夜からいろいろ考えて、今日球場に来てから最終決断しました」と藤田起用の背景を説明した。
プロ18年目・40歳のベテランに、CSの大舞台で突然スタメン出場させることには、スタミナ面を含めて不安もあっただろう。藤田は今季33試合出場、打率.250(36打数9安打)、0本塁打5打点。7月10日から2軍調整が続き、8月下旬には新型コロナウイルスの陽性判定も受けた。それでも9月28日に1軍昇格。三浦監督を「若返って1軍に戻ってきた」と驚かせた。今月3日のヤクルト戦(神宮)では、横浜(現DeNA)時代の同僚である内川、楽天時代にともに2013年の日本一に貢献した嶋、2歳下の坂口の引退セレモニーに立ち会い、感極まった表情を見せていた。
藤田は楽天時代に3度CSに出場し経験豊富。求心力のあるベテランが初戦で活躍すれば、CSを通してチームに勢いが生まれる──。三浦監督にはそういう目論見もあったのだろう。7回には、相手投手が青柳から左腕の岩貞にスイッチされたことをうけて、代打・宮崎を送られベンチに退いた藤田。貴重な戦力として、くっきりとした爪痕を残したことは間違いない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)