“結束力”で掴んだ甲子園 横浜高の前主将、アクシデント乗り越えた仲間との絆

新主将・緒方漣に寄せる期待「強い横浜の伝統をつないでほしい」

 取材に際して、「想い出のグッズを持ってきてもらえますか」と事前にお願いすると、『結束力』と書かれたチームTシャツを持参してくれた。夏の大会前、村田浩明監督が3年生全員にプレゼントしてくれたものだという。ひとりひとりが束になって戦うことで、強いチームになれる。そのためにも互いに声をかけ合い、助け合うこと。3年生が実践してきた姿である。

 緒方漣がキャプテンに就いた新チームは、秋の神奈川大会を制して、来春の選抜出場がかかる関東大会出場を決めた。玉城はできるかぎり練習に参加して、後輩たちにアドバスを送っている。時間がある時には、後輩をご飯に誘うこともあるそうだ。

「この間は、ぼくと板倉で、緒方と杉山(遥希)を誘って、回転寿司を食べてきました。緒方は、もともとは黙々と練習をするタイプで、周りに強く言うタイプではないんです。でも、今の代でキャプテンとして引っ張れるのは、緒方しかいない。この夏から、緒方にもいい意味でのオラオラ感が出てきて、少しずつ言えるようになってきています」

 緒方に「玉城から受けた影響は?」と聞くと、こんな話を教えてくれた。

「自分ひとりではなく、周りがあってこそのチーム。玉城さんは、周りの仲間をすごく大事にする方で、さりげない声かけをよくやられていました。自分もキャプテンとして、そういう声かけをできるようにやっていきたいです」

 玉城が後輩たちに臨むのは、「強い横浜の伝統をつないでほしい」。玉城から緒方へ。気持ちのこもったバトンが託された。

【前編】「伝統を汚してはいけない」 横浜高元主将・玉城陽希が重圧と闘った“最後の夏”

(大利実 / Minoru Ohtoshi)

○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。

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