戦力外通告は「分かる」 プロ野球選手がセカンドキャリア形成で持つべき“武器”

江尻慎太郎さん(左)と代々木ゼミナール副理事長・高宮敏郎さん【写真:荒川祐史】
江尻慎太郎さん(左)と代々木ゼミナール副理事長・高宮敏郎さん【写真:荒川祐史】

2014年オフに戦力外通告を受け、会社員へと転身した江尻慎太郎氏

 アスリートのセカンドキャリアは昨今、スポーツ界の課題の1つとされる。必ず訪れる現役生活を終えた後、現役時代よりも遥かに長い時間を過ごすことになる第二の人生をどう送り、どんなキャリアを描くかは多くの選手が頭を悩ませるところ。この問題に一石を投じるべく、球団として選手のセカンドキャリア支援に力を注ぐソフトバンクの球団OBが、企業経営者や各界のトップランナーらと考える新連載がスタート。

 第1回は日本ハム、DeNA、ソフトバンクでプレーし、現在はホークス子会社「Acrobats」で働き、自らも所属OBの1人として活動する江尻慎太郎氏と、学校法人高宮学園代々木ゼミナール副理事長、「SAPIX YOZEMI GROUP」共同代表で教育学博士でもある高宮敏郎氏が教育の観点も踏まえて話し合った。前編は江尻氏の経験をもとに考えるプロ野球界の現実、選手の戦力外通告と受験生における共通点、セカンドキャリアに繋がるタイムマネジメントの重要性について。

高宮敏郎氏(以下、高宮)「江尻さんは日本ハム、DeNA、ソフトバンクと13年間、現役でプレーされ、今もソフトバンクの社員として働いていらっしゃる」

江尻慎太郎氏(以下、江尻)「私、ホークスでの選手歴は2年しかないんです。今年で社会人8年目。ソフトバンクのグループ会社で働く身になり、トータル10年目になります」

高宮「その8年の社会人としてのキャリアは?」

江尻「実は戦力外通告を受けた時に球団からは『スカウトをやらないか』と声をかけてもらいました。と同時に、今は取締役GMをしている三笠(杉彦氏)から『ビジネスマンになってみないか』とも言われたんです。現役を続けたかったので、トライアウトを受けましたが、オファーがなくて引退ということになりました。その時に『ビジネスマンになってみないか』という言葉に、世界が広がっていくような感じがして、そっちに一歩足を踏み出してみたというのが社会人としてのスタートです」

高宮「その後はずっとホークスで社員を?」

江尻「最初は新橋でサラリーマンをやっていました。『SB C&S』というIT流通商社で営業マンを3年間やりました。デジタルマーケティングツールの代理店営業とか、代理店育成とかですね。今考えると恐ろしいです。ビジネスメールのことも知らないし、持っているものは何もない。そんな中でよく働かせてもらえたなという感謝の気持ちがありますし、すごくいい経験になりましたね」

高宮「野球で培ってきたことでセカンドキャリアに生きているところはありますか?」

江尻「元プロ野球選手だったことが生きることは多々あると思います。今は武器にしてる部分もあるんですけど、常に結果を出さないとクビになるんだ、と毎年思い続けた時間っていうのは、セカンドキャリアにおいても貴重かもしれないと思います」

「まあまあぐらいの選手は2軍落ちの恐怖と戦っているから、いいプレーができないこともある」

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