戦力外通告は「分かる」 プロ野球選手がセカンドキャリア形成で持つべき“武器”

日本ハム、横浜、ソフトバンクで活躍した江尻慎太郎さん【写真:荒川祐史】
日本ハム、横浜、ソフトバンクで活躍した江尻慎太郎さん【写真:荒川祐史】

「まあまあぐらいの選手は2軍落ちの恐怖と戦っているから、いいプレーができないこともある」

高宮「プロ野球選手は1年ごとの契約。常にそれは意識しているものですか?」

江尻「もう夏過ぎからザワつきます。自分の年俸を見て、この成績ではヤバいな、みたいなのはすぐ分かってきます。あとは年齢ですね。私の場合はプロ入りが25歳だったので、常に活躍してもらわなきゃ困るっていう年齢だったので。どうやって生きていこうかっていうのは考えていましたね。僕ぐらいの、まあまあぐらいの選手が一番戦ってるのは2軍落ちの恐怖なんです。2軍落ちの恐怖と戦っているから、いいプレーができないこともある」

高宮「ミスしたくないという意識が強く働く」

江尻「そうですね。マネジャーにトントンと肩を叩かれるのが一番怖いんです。カブレラより怖いんですよ。ちょっと明日からどこどこに行ってくれるかって言われて、荷物を片付けて、ロッカーを整理して……。それを13年間繰り返したので、もう絶対に戻りたくないですね」

高宮「勉強の世界もそうですが、やはり野球を突き詰めていく人が勝ち残っていく世界ですか」

江尻「それは間違いないとは思いますね」

高宮「漫然と、漠然と野球をやるのではなく、パフォーマンスを保つために突き詰めてやれる人ほど、セカンドキャリアに繋げられそうな感じがします」

江尻「プロ野球選手がものすごい集中力とエネルギーを持ってる人たちの集まりであることは間違いありません。例えば、馬原(孝浩)さんなんかは、ご自身でも言うんですけど『故障に苦しんだ元セーブ王が、治療の国家資格を取れば唯一無二の存在になれる』とまず決めているんですよね。そこにエネルギーが生まれて、毎日100キロくらいを車で行き来して専門学校に通い続けました」

「専門学校に通い続けた3年間は『毎日試合と同じだった』と言っていました。とにかく試合のために全力を注ぐ、勉強のために全力を注ぐ、と。今まで勉強なんてやりたいと思ったことなんて一度もないけれども、やっぱり自分でそういう人間になるんだという目標を決めたら、できたと言ってるようなこともありました」

高宮「プロ野球選手はものすごい競争を勝ち抜いた人たちですよね。そうやってプロに入ってきても、5年後に生き残れている人は本当に少ない」

江尻「多分、現役を早く終わってしまう人たちは、もうプロ野球のレベルが実際どれぐらいなのか気づくこともなく終わってしまうぐらいの競争なんです。私も同期入団が7人いましたが、3年たったら2人しか残っていなかった。4人は戦力外、1人はトレードかな。その時はさすがにヤバい世界だなと感じました」

「勉強、教育の現場でも通じるものがあって、タイムマネジメントはすごく重要」

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