ドラ1指名事前公表はなぜ激増? 9球団が実施…西武・渡辺久信GMが語った“思惑”
「外れ1位では思うような選手獲得が難しそうな状況がある」
ドラフト戦線異常あり──。ドラフト会議前日の19日までに1位指名を事前公表する球団が相次ぎ、12球団中9球団に上った。昨年はわずか2球団で、西武が公表していた西日本工大・隅田知一郎投手には、当日にヤクルト、巨人、広島が競合。ノースアジア大明桜高・風間球打投手を指名すると公表していたソフトバンクは、“1本釣り”に成功した。今年の事前公表激増に、西武の渡辺久信GMは「近年になく多い。各球団とも、重複を避けるのが狙いだと思います」と見解を示した。
19日までにヤクルト、巨人、広島、中日、オリックス、ソフトバンク、西武、楽天、日本ハムが1位指名を公表。未公表のDeNA、阪神、ロッテの方が圧倒的に少数派となる異例の事態だ。西武は11日の時点で早大・蛭間拓哉外野手を1位指名すると公表済みで、渡辺GMは公表激増の背景について「今年は重複して抽選で外した場合、“外れ1位”では思うような選手を獲得することがなかなか難しそうな状況がある」と指摘する。
決して豊作ではないと言われる今年のドラフトで、選択肢は例年に比べて少ないと見られている。もちろん、公表したからといって獲得できるとは限らないが、他球団が重複を嫌い指名を回避して競争率が低くなる可能性はある。実際、9球団が指名を公表した選手には今のところ、1人も“被り”がない。セーフティに1本釣りを狙う球団が多い表れだろう。結果的に“早く公表した者勝ち”になりつつあるようにも見える。
「ウチは昨年公表して獲得することができたので、ゲン担ぎの意味もある」と渡辺GM。昨年は4球団競合となった抽選で、西武の飯田光男球団本部長が当たりクジを引き当てた。当日が近づくにつれて“棲み分け”が明確になっている今年のドラフトで、果たして抽選は行われるのだろうか。
一方、西武は今月8日、画期的な入団テストを実施した。プロ野球の入団テストと言えば従来、50メートル走と遠投で人数を絞り込み、実技試験に進むパターンが多かった。しかし西武では、論文、パソコンの前での視神経反応テスト、10メートルスプリント、20メートルスプリント、メディシンボール投げ、ワットバイクなどで選手の潜在能力を科学的に測定。実技試験でもトラッキングシステムを使い、投球の回転数やスイングスピードなどを計測した。渡辺GMは受験者のドラフト指名について「可能性はあります」と明言した。あの手この手で有望選手の発掘・獲得を目指した成果がどう出るか──。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)