ワールドシリーズ取材で蘇った記憶 誰からも愛された“伝説のアナ”と邂逅した26年前【マイ・メジャー・ノート】第10回

ワールドシリーズを制したアストロズ【写真:ロイター】
ワールドシリーズを制したアストロズ【写真:ロイター】

フィリーズ本拠地にあるレストラン名は“名物アナ”から取られている

 アストロズ(ア・リーグ)とフィリーズ(ナ・リーグ)との間で競われたワールドシリーズ(7回戦制)は、同シリーズ開幕の地ヒューストンに戻っての第6戦をアストロズが4対1の勝利で飾り、4勝2敗で5年ぶりの美酒に酔った。

 敗れたフィリーズは2008年以来14年ぶりの頂点を目指したが、地元フィラデルフィアでの第3戦から第5戦を1勝2敗で負け越したのが痛手となった。熱狂的なフィリーズファンが連日詰めかけたシチズンズバンク・パークが、大声援に包まれハイボルテージに達した中で、僕は記憶のページをめくった――。

 11月1日の第3戦だった。左翼アッパーデッキ後方に設けられた大型スクリーンのスコアボードを眺めていると、その真下にあるレストランに目がとまった。濃紺の日よけシェードに浮かぶ“HARRY THE K’S”の文字が、座っていた記者席からの視界に入る。これは、”Harry the K”のニックネームで親しまれたフィリーズの名物アナウンサー、Harry Kalasから取られている。

 ハリー・カラスは、ありがちな絶叫型とは違い、常に自然体でマイクに向かい、分かりやすい表現描写に徹する実況で多くのファンに愛され、またカラスもファンを愛した。その人柄は多くの逸話を遺している。

 球場入りの際には必ず駐車場の外で手を振るファンに近づき、全員のサインに応じたことや、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッグ病)の患者を支援する団体主催のパーティーでは患者のみならず、同席した家族全員の名前を覚えて司会に臨んだことなど、「人間ハリー・カラス」の機微に触れた人は数知れない。

名物アナ、ハリー・カラス氏と会った26年前の記憶

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