ワールドシリーズ取材で蘇った記憶 誰からも愛された“伝説のアナ”と邂逅した26年前【マイ・メジャー・ノート】第10回

名物アナ、ハリー・カラス氏と会った26年前の記憶

 フィリーズの本拠地シチズンズバンク・パークのメディア専用ダイニングで美味しいアイスクリームを山盛りで出すことから「ツースクープス」の愛称で呼ばれる80歳の長老フランク・マズーカさんは、フィリーズが13年前にレイズを倒し、世界一の座に就いた際、放送ブースにあった優勝記念の帽子を「職場の同僚の皆さんにもどうぞ」と一箱を手渡されたことが忘れられないと声を詰まらせ、その気配りに「フィラデルフィアの良心」と真情を込めた。

 記者にも忘れられない思い出がある――。

 1996年の初夏だった。ドジャースタジアムのメディアダイニングで金髪の紳士と相席になった。その夜に先発予定だった野茂英雄について幾つかの質問をしてきたその紳士は、席を立つ間際に、背広の内ポケットに手を入れ、こう言った。

「日本の人たちは初対面では名刺交換をすると聞きます。どうぞ」

 後日、カラス氏が日本流のビジネス作法を調べていたことを知った。Harry Kalasと印刷されたその名刺はファイルに収め今も大切にしている。

息子トッド・カラス氏はアストロズ公式戦テレビ中継を担当する

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