激怒する星野仙一、黙り込む落合博満…当時の側近が明かした“犬猿の仲”の真実
就任2年目の1988年にリーグ制覇も…日本シリーズでは西武に力負け
そんな闘将に関して、早川氏には忘れられない出来事がある。1988年、中日は星野体制になって2年目のシーズンでセ・リーグを制覇した。そこにたどり着くまでには、怒ったり、蹴ったり、走ったり、いろんなことがあったが、すべてを超える一瞬だったという。ナゴヤ球場で清原和博に特大アーチを打たれるなど1勝4敗で西武に敗れた日本シリーズ。敵地・西武球場での第5戦に6-7で負けて終わったが、その後の話だ。
球場では敵将・森祇晶監督の胴上げシーンを「目に焼きつけとけ!」と選手に指示した星野監督だったが、東京・立川の宿舎に戻って、その姿は豹変した。「いつもはなんだかんだとあるんだけど、そのときは、もういいぞ、お疲れさんって」。そしてスタッフだけになったときに、ことは起きた。いきなり闘将が涙を流しながら土下座したのだ。「『みんなようやってくれた。ありがとう。勝てなかったのは俺の責任。申し訳ない』ってね。みんなびっくりしてましたよ」。
その年、星野監督に仕えたコーチは木俣達彦総合コーチら、ほとんどが年上。「コーチに対して『何教えているんや!』とかガンガン言ってきましたからね。そんなこともあったんだと思いますよ」。怒ったら怖いけど、本当は優しい、すごく優しい。これは闘将を知っている人の共通の意見だ。忘れられるわけがないが、早川氏にはそんな星野監督の教え子たちのなかで、とりわけ印象深い選手がいる。その彼は、バケツを持たされて立たされていた……。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)