村上宗隆のメンタル操縦法「気分転換はしません」 極限状況で生まれた“ご褒美”56号

都内の日本記者クラブで会見を開いたヤクルト・村上宗隆【写真:小池義弘】
都内の日本記者クラブで会見を開いたヤクルト・村上宗隆【写真:小池義弘】

新記録達成目前で13試合ノーアーチの心境「自分の調子がよくないと」

 歴史に名を刻んだ22歳が、独自のメンタルコントロール術を明かした──。今季56本塁打を放ち日本選手のシーズン最多記録を更新、さらに史上最年少で3冠王にも輝いたヤクルト・村上宗隆内野手が14日、都内の日本記者クラブで会見した。王貞治氏の記録に並ぶ55号を放った後、13試合ノーアーチの大不振に苦しんだ末の快挙達成を振り返った。

“村神様”と言えども、鋼のメンタルを持っているわけではない。今季最終戦・最終打席まで追い込まれ、実に61打席ぶりの1発で新記録を達成した。「自分の調子が良くないとわかっていながら、打席に立つ恐怖感がありました。正直言って、メンタルを立て直したというより、苦しみながら、もがき続けて、野球のことを考え続けた事へのご褒美だったと思います」と述懐した。

 タイ記録の55号を放ったのは、9月13日の巨人戦。そこからパタリと本塁打が出なくなった。それでも同25日のDeNA戦でチームのリーグ連覇が決まった際には、あえて「(本塁打記録更新と3冠王獲得へ向けて)もっとプレッシャーをかけてほしい」と発言した。「ずっと満足のいく成績を残してきて、最後の最後に達成できないのは嫌でしたから、開き直ってそういう発言をしました」と当時の胸の内を明かす。

 NPB史上18年ぶり8人目の3冠王獲得までの道程もしかり。その18年前の2004年、平成ただ1人の3冠王となった松中信彦氏(当時ダイエー)は同じ熊本県出身とあって「言葉では3冠王、3冠王と(簡単に)言われますが、やっている方としては、3つ取る難しさとか、いろいろなことがある。それを経験された松中さんを尊敬しています」と思いを寄せる。

 ただ、どれだけプレッシャーに苦しめられても「気分転換はしません。試合が終われば、ご飯を食べて(試合の)振り返りをして寝るだけ。野球で悔しい思いをしたら、野球でしか取り返せないと思うので」と言う。野球と関係ない趣味などへ逃げれば、さらに野球をするのが怖くなるケースもある。結果が悪くても生活のリズムを崩さず、決して野球から逃げないのが村上流である。

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