村上宗隆のメンタル操縦法「気分転換はしません」 極限状況で生まれた“ご褒美”56号

会見後に記念撮影をする村上【写真:小池義弘】
会見後に記念撮影をする村上【写真:小池義弘】

一足飛びでなく手近に目標を設定…トリプルスリーは「無理です」

 決して大風呂敷を広げず、一足飛びに駆け上がるのではなく、手近な目標を立てていくタイプでもある。プロ5年で通算160本塁打を積み重ねている村上には、将来的に王貞治氏の通算最多本塁打記録(868本)更新の期待もかかるが、「王さんの記録はまだ意識したことがありません。通算本塁打は(王氏と村上の間にも)たくさんいるので、1つ1つ感じながらやっていければと思います」と1人1人抜いていく構えなのだ。

 3冠王を獲得する一方で、3年連続の2桁盗塁(今季は12個)も達成。村上なら史上初の3冠王&トリプルスリー同時達成も夢ではなさそうなものだが、「無理です。現実的な数字は全て狙いたいですが、限界があります」と取り付く島もない。「20盗塁に近づけるくらいは可能だと思います。まだ若いので、走る事を含めて全ての面でレベルアップしたい。トリプルスリーは期待せず、8個くらい増やして20盗塁くらいできる選手になりたいと思います」と、どこまでも細かく堅実だ。

 時にはこうした堅実さが裏目に出ることもあるようで、「後悔してるのは、50号を打った後、シーズン終盤にあと5本くらい、王さんに並べるくらい打てればいいという目標を立ててしまったことです。そこでもっと自分に期待して、60本とか61本といった目標を立てておけば、違う結果が生まれたのかなとも思います」。元同僚のウラディミール・バレンティンが保持するシーズン60本塁打のNPB記録へ、ちょっぴり未練ものぞかせた。

 来季改めて、シーズン本塁打記録の更新や2年連続3冠王といった“過大な”期待をかけられるのは避けられない。しかし「プレッシャーはありません。期待に応えるのは自分自身。やるべきことをしっかりやっていけば、結果もついてくると信じています」と言い切る。大フィーバーにもまれながら記録達成にこぎつけた経験が、新たな自信を生んだようだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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