2人合わせて通算3612安打… “最後の近鉄戦士”の心が折れた「バケモン」との遭遇

西武・栗山巧【写真:荒川祐史】
西武・栗山巧【写真:荒川祐史】

神戸ドラゴンズの1つ上には西武・栗山巧が在籍「この人には全てで勝てない」

 投げて、打って、走って。走攻守全てにおいて「自分が一番上手い」と思っていた坂口氏だったが、練習参加した初日に、その思いは一変することになる。両翼85メートルのグラウンドで竹バットを使い場外弾を連発し、走ってもダイヤモンドを颯爽と駆け抜ける、1学年上の左打者の姿に目を奪われた。

「体もデカいし、1人だけバケモンがいる。しかも、カッコいい。こんな選手がいるんだとビックリした。『なんやこれ、完敗や』って初日で挫折しましたね。これまで自分が一番と思っていたが、この人には全てで勝てないって」

 自信満々だった坂口氏の鼻をへし折ったのが、現在は西武でプレーし通算2086安打をマークする栗山巧外野手。当時から、その存在はずば抜けていた。プレー以外でも「初めはめちゃくちゃ怖かったけど、男気があって面白くて、試合に出てない人にも優しくて気遣いができる。みんなが憧れる人」と、人間性も素晴らしくチームの先輩や後輩に愛されていた。

近鉄・オリックス・ヤクルトで活躍した坂口智隆氏【写真:中戸川知世】
近鉄・オリックス・ヤクルトで活躍した坂口智隆氏【写真:中戸川知世】

 とてつもない輝きを放つ栗山との出会いが、野球への考え方を変えるきっかけとなった。神戸ドラゴンズに入団して、いきなり挫折を味わったが「栗山さんには勝てないが、この人がいる間は2番目に凄い選手になってやる。そうしたら周りも『1個下でこんな選手がいる』と思ってくれる。そういった賢さは当時からあったと思います」。

 全てを兼ね備えた“栗山先輩”を必死に追い求めた結果、入部してすぐに「3番・坂口、4番・栗山」の最強クリーンアップが完成する。「自分でもこの並びはカッコいいなと当時思っていましたね(笑)」と、徐々に自信を取り戻すと最上級生になる頃には、中学野球界でも名が知れ渡る存在になった。だが、高校進学を前に人生の転機を迎えることになる。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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