牧田和久は「大きな影響を与えた」 台湾で奮闘する元虎コーチが語る“お手本”

林威助監督(左)の横には、いつも平野恵一コーチの姿があった【写真:(C)CPBL】
林威助監督(左)の横には、いつも平野恵一コーチの姿があった【写真:(C)CPBL】

植え付けた競争意識は外国人選手にも…「これも戦略」

「今年初めのバッティング会議で、3割打ったやつ何人いるんだって聞いたら、1人(王威晨)しかいなかった。打ちたいやつはって聞いたら最初は数人、でも次に聞いた時は、結構手を挙げたので『絶対打たせてやる、俺の言うこと聞いたら絶対打てる』と言ったんですよ」正確には「3割打たせてやる」ではなく、「3割打てる選手はこういうことをしているよ」と選手たちに伝えていった。潜在力の高い選手たちはその指導を吸収し成長。さらに重要だったのは、チーム内に競争意識を植え付けることだった。

「主力に関しては特に何も言わなかったです。何をしたかってライバルをつくっただけです。これも戦略です。だから調整不足とか調子が悪かったんじゃない。出られなかった人は競争に負けた、出られた人は競争に勝っただけなんです」。競争意識植え付けによる効果は、外国人も同様だった。好リード、強肩で投手陣を牽引したドミニカ共和国出身の捕手フランシスコ・ペーニャは、2軍暮らしが続き心が折れかけていたとき、平野コーチに「それでは台湾人捕手に負けちゃうよ」と言われて再度奮起したという。

 指導は技術面にとどまらなかった。2019年ドラフト1位の外野手、岳政華は、林監督から「好打者に育ててほしい」と特に要望があった選手だった。平野コーチ「チームが彼に求めていること、監督が求めていることと、彼が今までしてきたこと、こうなりたいっていうことにおいて、いろんな要素が少しずれている」と感じていた。オールスターゲーム前、岳政華を呼ぶと「このままじゃ絶対に駄目だ」と厳しい口調で叱り、まずはチームで求められている役割を果たすよう、変化を求めたという。

 岳政華はオールスター明けの8月上旬からスタメン入りすると、2割弱だった打率を1か月で3割前後まで高め、9月上旬からはリードオフマンに定着。プレーオフ、台湾シリーズでも4割を超える高打率をマークし、シリーズでは史上最年少でMVPを受賞した。平野コーチは「はっきり言って俺は何もしてない。何か人が変わったかのように打撃も変わった。彼が勇気を持って変わってくれたんじゃないかな」と目を細め、成長を喜んだ。

7割の失敗の中身を重視、後期は意識面にも変化が…

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