松田宣浩に「絶対打てなくなるよ」 自信持って“ダメ出し”…常識指導に反対したワケ

元オリックス・藤井康雄氏【写真:山口真司】
元オリックス・藤井康雄氏【写真:山口真司】

T-岡田は「回転したら駄目。後ろから移動してあげる感じ」

「4スタンス理論」に基づいて指導すると、岡田は変わった。「B2タイプはある意味、回転したら駄目なんですよ。後ろに軸があるんだけど、絶対開かないように、ちょっと後ろから移動してあげる感じ」。ウエスタン・リーグで本塁打、打点の2冠。1軍でも8月半ばの昇格から7本塁打をマークした。T-岡田に登録名を変えた2010年は1軍で33本塁打を放ち、タイトルを獲得した。この結果に藤井氏は自信を深めた。

 2011年シーズンにソフトバンクの1軍打撃コーチに就任。2013年には「4スタンス理論」のマスター級トレーナー資格も取得し、その指導はさらに強固なものになった。「松田(宣浩)は打ち方が独特で、突っ込んでいって前さばきで打つじゃないですか。実際、デッドボールも当てられて、何回か骨折していたので、当時はもっとボールを呼び込んで、もっともっと後ろの軸で打たなければ駄目だって言われていたんです」。藤井氏はそれに反対したという。

「マッチ(松田)、そんなんだったら絶対打てなくなるよって言いました。イチローと同じA1タイプ。足が上がっていって、そのままもっと入っていって、前さばきをしていかなきゃ駄目だよってね」。松田はそれを理解して継続し、結果も出した。「あの時、変えていたら、そうはならなかったと思います。いまだにマッチからは連絡がきますよ」。年齢の壁もあって巨人に移籍することになった松田に「頑張ってほしい」とエールも送った。

 2018年にオリックスに戻り、主砲・吉田正尚にも「4スタンス理論」を伝えた藤井氏は2022年シーズン、阪神で1、2軍巡回コーチを務めた。同じく「4スタンス理論」を勉強していた矢野燿大監督に呼ばれた。最大のテーマは決まっていた。素材は超一級品の佐藤輝明の指導だ。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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