投手転向も「客寄せパンダじゃアカン」 根尾昂から突然の電話…幻の“二刀流”進言

現在は関メディベースボール学院の野手総合コーチを務める立石充男氏【写真:本人提供】
現在は関メディベースボール学院の野手総合コーチを務める立石充男氏【写真:本人提供】

「両方やるのがいい」2軍で投打の二刀流をやらせたかった

 その2年目、2軍野手総合コーチとなった立石氏は仁村徹2軍監督の許可を得て、練習の一環として根尾にピッチングもやらせていた。以前から「投手・根尾」を1軍の与田監督にも勧めていたが「ええ球、放ってました。やっぱりこの子はピッチャーの方がいいんじゃないかって思いましたし、根尾にも言いましたよ。お前はどう思っているかわからないけど、俺はピッチャーもバッターも両方やるのがいいんじゃないかと思っているよ、ってね」。

 2軍のうちは二刀流にチャレンジし、どちらがいいかを見極めるべきというのが立石氏の考えだったが、結局、チームは動かなかった。投手はあくまで練習だけで、メインは打者という流れは変わらなかった。「3年目にはセカンドをやらせました。セカンドの方がプレーは落ち着く。ショートだったら、慌てて投げるんでね。バッティングもよくなりましたよ」というが、1軍レギュラーの壁は厚かった。立石氏は与田体制の終了とともに、中日を退団した。

 1軍が立浪和義監督となった2022年途中に投手に転向した根尾について立石氏は「良かったんじゃないかと思う」と話す。根尾には「覚悟できたか」とLINEを送ったそうで「できました」との返信があったという。加えて電話でもこう話した。「これから大変だぞ、プロってそんなに甘くないよ、客寄せパンダになったらアカン、実力が伴わないと駄目だよ」。もちろん、それも期待しているがゆえの言葉。その成長、成功を誰よりも楽しみにしている。

 ここまでのコーチ業を振り返り、立石氏は「いろんな選手と一緒に野球をやって、自分も勉強になるんです。こういう選手にはこういう教え方。こういう話し方、伝え方。すべてが自分の財産になっています」と言う。現在は関メディベースボール学院の野手総合コーチとして、アマチュア指導に精を出す。長尺115センチのノックバットを自由自在。まさに職人技だが、この技術でも仰天の“過去”があった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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