敵も味方も仰天…100メートル先の“百発百中” 星野仙一監督も一目置いた「神業」

ノックをする立石充男氏【写真:本人提供】
ノックをする立石充男氏【写真:本人提供】

アマ指導の今は「優しい打球です」選手に自信をつけさせるために

 中日・星野仙一監督に「立石のノックを報道陣は取材すべきだ」と言わしめ、強弱自由でシートノックではわざと“きつめ”の打球を正面ではなく、捕れる範囲内のサイドに放ち、立浪和義内野手に「打球が強すぎる」とぼやかせたことも。韓国・ハンファのコーチ時代にも、そのノック技術を監督に注目され「外野手にレフト線へ全部フェンスギリギリのノックをしてくれないか」と依頼され、朝8時から3時間、外野手3人にずっとそのコースへ打ち続けたという逸話もある。

 現在、関メディベースボール学院の野手総合コーチの立石氏は「今は難しい打球は打たないです。優しい打球です。選手に自信をつけさせるためにはどうすればいいかを考えてます」と言う。“指導=自身の勉強”との考え方で取り組み「一番言うのは自分の長所を知りなさいということ。それを崩したら駄目なんです。面白い選手は出てきてますよ。それだけ練習も振り込みもやってますけどね」と笑みをこぼした。

 そんな立石氏は南海時代の監督・穴吹義雄さんの言葉を決して忘れない。「『明日クビだと分かっていても、ちゃんと今日まで指導してやれ』『こいつはアカンなっていうブリキは磨けば、こすれて穴があくかもしれないけど、穴があくくらい教えてやれ』って言われたんです」。その精神で今も選手に接しているからこそ、こう言い切る。「だからノックバットには魂を込めて打つべし」。一球、一球、いつも思いはひとつ。「何とかうまくなってもらいたい」。コーチ業のスペシャリストはそう願い続けている。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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