「どんな顔で帰ればいいのか」 失意に沈んだシドニー五輪…忘れられぬ痛恨の1球

元中日・鈴木郁洋氏【写真:橋本健吾】
元中日・鈴木郁洋氏【写真:橋本健吾】

韓国との3位決定戦…3打席連続で三振に抑えていたイ・スンヨプに痛恨の適時打

 初のプロアマ混合チームで周囲からの期待は大きかったが、大会に向け万全の準備で挑むことはできなかったという。NPB組はペナントレース期間中ということもあり代表合宿に参加できず、本体に合流できたのはアメリカとの初戦3日前。そんな中でも鈴木氏だけは球団から許可を得て合宿に参加し投手陣たちとのコミュニケーションを図っていた。

「アマチュア選手の球は受けていたが、五輪で中心となる先発の松坂と黒木さんはほぼ受けないまま。決め事は『困ったらこのボールでいこう』といった基本的なことぐらい。当時はデータもほとんどなく、オリンピック前の強化試合、前回大会のデータぐらい。投手の良さを引き出すしかなかった」

 最も忘れられない試合は銅メダルをかけた韓国との3位決定戦。先発・松坂は7回まで無失点の好投を見せていたが、同点の8回に2死二、三塁のピンチを背負うとイ・スンヨプに内角直球を痛打され、均衡を破る適時二塁打を浴びた。前の3打席では全てフォークで3連続三振を奪っていた相手に力勝負を挑み敗戦につながった。

「冷静に何年か経って、考えればあの場面は絶対にフォーク。でも大輔の一番いいボールは真っすぐ。そこで抑えようとしてしまった。プロでの経験も浅く、自分も若かった。今でも悔いが残る1球です」

メダルを逃して落胆も「唯一、救われたのは選手の絆」

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