グラブはめられなくても「野球がしたい」 メジャー87勝左腕がくれた“知恵と勇気”
打者としても出場、天谷監督「勇気づけられる」
この日は「6番・DH」で先発出場。投げるだけでなく、左打席にも立った。右手で握ったバットを寝かせて肩でも支え、さらに左手を添える。「前で打ったときは右手1本になるときもあるし、後ろで打てば左手が(バットに)当たっているときもある。ほぼ右手で打ってます」。2打席に立ち、三振と遊ゴロだったが、120キロを超えるマリーンズジュニアの投手陣にも振り遅れることなく、食らいついていた。打撃も「速い球に苦戦しましたが、自信あります」と話す。
天谷監督も、投打でチームの中心にいる田渕川くんに尊敬のまなざしを向ける。選出当初は投手としてだけ起用しようと考えていたが、練習試合で安打を量産したことで「自信をもって(打者として)送り出しました」。チームでも中心的な存在でムードメーカー。「大舞台で堂々とプレーする姿は本当に勇気づけられますよね」と目を細めた。
カープジュニアは28日にホークスジュニアと対戦する。決勝トーナメントへ進出には、次戦に勝って1勝1敗としても、平均得失点差率であるTQB(Total Quality Balance)で1位になる必要があるため、厳しい状況だ。それでも田渕川くんは「最後まで全力でやっていきたい」と前を向く。
中学では、クラブチームで硬式野球にチャレンジするつもりだ。ハンディキャップは関係ない――。日本球界のジム・アボットとして、球界だけでなく日本全体を勇気づける存在になる。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)