坂口智隆と出会ったバッティングセンター　特待生制度があれば…幻の甲子園優勝

報徳・永田監督も「この選手は絶対に獲りに行かないといけない」

　今季限りで現役を引退した坂口智隆と筆者は、中学時代から約23年間の付き合いだ。高校時代は兵庫県で甲子園を争ったライバル、プロに入ってからは担当記者として「最後の近鉄戦士」の勇姿を見届けた。ここでは“坂口ファン”に向け、これまで世に出なかったエピソードをお届けしたい。

　彼との出会いは中学2年の時。当時、兵庫県西部では左打席で硬式ボールを打てるバッティングセンターは1か所だけ。多くの小中学生が通う中、木製バットで快音を連発する長身の男が、ヤングリーグ「神戸ドラゴンズ」でエース兼外野手の坂口だった。

　同い年の中学生にライバル心を燃やしていたが、その思いは一瞬にしてなくなった。目の当たりした打撃にレベルの違いを痛感し「そういえば、どこの高校いくの？」と、ありきたりな会話をするのが精一杯。当時から“ヤンチャ”な見た目の坂口からは「まだ、分からんよ」と一蹴され、その場は終わった。

　筆者の母校・報徳学園の監督だった永田裕治（現日大三島監督）も「この選手は絶対に獲りに行かないといけない」と走攻守の三拍子揃った才能に注目。スカウト陣を連日バッティングセンターや試合会場に派遣させるほど惚れ込んでいた。